暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第234話 剣の聖域
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だと言うのに、距離を瞬時に詰め、構えた剣を右肩から斜め下へ 袈裟切りに放った。その瞬間は、ランは先に仕掛ける事に成功した事を疑わない。一瞬の見切り戦に限らず、対人戦においては、単純なMob、アルゴリズムで動くMobとは比べものにならないのは周知の事実。……つまり、様々な駆け引きは存在する。
 だが、決して例外は無い、と言える事は幾つかある。それは単純明快。

《先手必勝》

 先に攻撃を当てる、と言う事だ。
 勝負の流れを掴み、且つ 身体に余分な力がかかっていたとするならば、良いガス抜きにもなる。……真の強者同士であれば、圧倒的に優位に立てる事は言うまでもないだろう。

 だが――、そう単純ではないのが、対人戦だ。 

「っ………!!」

 急接近し、剣を振るう。間違いなく一撃を入れたと確信できたその瞬間、ランは確かに見た。

 自分の太刀筋が、彼に迫るその瞬間に、一瞬の間に更に輝きを増したかの様な彼の()を。


――動きを最小限に、そして 最大に引き付けてから。一直線に、最短距離を。


 その業はまさに、《居合》や《抜刀術》とも呼べる代物だ。
 瞬速の剣撃、リュウキの返す剣は、完全に隙だらけとなったランの胴体部を狙った。描くは、真一文字の太刀筋。まるで伸ばした糸に、閃光が走るかの様。

「………!!」

 そして、ランが一撃を入れる事が出来た。と確信できた事と同じく、リュウキも、その一閃のもと、完全に捉えたと錯覚した。するには十分すぎる程だった。赤い傷のエフェクトが ランの身体に描かれる未来図が目の前に見える程に、完璧なタイミングだった。
 だが、ぎゃりぃぃんっ! と言う、けたましい金属音が周囲に迸ったのだ。それはまるで雷光の様なエフェクト、衝撃音だった。続けて生み出された銀の閃光、そして 朱い閃光が渦巻いた。それは、これまでに何度も何度も、数えきれない程聞いてきた音とは違う。仮想空間の身体。アバターに攻撃を、剣撃を当てた音ではなかった。

「っ!!」


―――何が起きたのか一瞬気付けなかったのは、いったい いつ以来だろうか? 

 記憶を辿りつつ、リュウキは、思わず笑みを浮かべていた。

 そう、あの一瞬の間に、ランは回避や防御態勢ではなく、あろう事か、一挙反撃に転じたのだ。攻撃は最大の防御、と言わんばかりに――最短最速の剣を受け止めたのだ。その2つの剣の衝突が、先ほどの閃光と衝撃音を生み出した。

 その衝突の威力により、比較的軽量クラスのアバターである2人は、互いが攻撃の威力を利用して、後方へと跳躍し再び間合いを取った。
 

 突然の衝突、そして 空間が破裂したかの様な衝撃音、目も眩む……閃光。

 それらの展開は、緊張感のあまり、静まり返っていた場を沸
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