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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十六話 和平への道 (その2)
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入れた。支持率の問題も有るだろうが本音は私たちを恐れたんだ。仲の悪い私たちが陰で協力して倒閣運動をしているんじゃないかと……」

「出兵中は政争は起きない、いや起せない。そして勝てば支持率が上がり政権は安泰、私達の首も切れる、そう言うことか?」
「そう言うことだ、レベロ」

私たちがサンフォードを追い詰めた。その事がこの出兵計画に繋がったのか。私達のせいでまた戦争が起きる……。私達の間に沈黙が重苦しく落ちた。

「宇宙艦隊は出兵の規模を大規模な物にしようとしている」
大規模? 思わずトリューニヒトの顔を見詰めると彼は頷きつつ答えた。
「おそらく九個艦隊、動員兵は三千万を超えることになると思う。国内には二個艦隊ほど残すそうだ」

九個艦隊! 三千万!
「しかし、そんな艦隊が何処にある。殆どが編成中じゃないのか?」
私の問いにトリューニヒトは力なく首を振った。

「各星系の警備隊や星間警備隊がある。イゼルローン要塞が手に入った以上、その必要性は小さくなった。正規艦隊の再編に使えばいい、宇宙艦隊司令部はそう考えている」

「止めるんだ、トリューニヒト。これは罠だ、敵の司令長官はそんな甘い男じゃない」
「……」

「シトレが言っていた、恐ろしい男だと。止めないととんでもない事になる」
トリューニヒトは私の言葉に反応しない。信じないのか。もどかしい思いで言葉を続けた。

「トリューニヒト、出兵を止める事は出来ないだろう。しかし規模を小さくする事は出来るはずだ。このまま出兵を許したらとんでもない事になるぞ、大敗したらどれだけの被害が出るか……」

「大敗しても良いと思っている」
「何を言っている?」
私は思わずトリューニヒトの顔を見た。トリューニヒトは私を睨むような目で見ながら同じ言葉を繰り返した。

「大敗しても良いと思っている、そう言ったんだ」
「馬鹿な、何を言っている、気でも狂ったか」
「正気だよ、レベロ」
そう言うとトリューニヒトは更に視線を強めて私を見た。何を考えている?

「大敗すれば、軍の主戦派は失墜する。シトレも引責辞任だ。軍部は発言力を失うだろう。サンフォードを始め出兵に賛成した連中も辞表を出す事になる。そして同盟市民の間にも厭戦気分が出るだろう」

「……」
「そのとき権力を握るのは出兵に反対した私か、君か、ホアンだ。わかるか、レベロ、和平のチャンスが来るんだ」

「しかし、どれだけの被害が出ると思っている。三分の一でも一千万の戦死者がでるぞ」
思わず声が震えた。しかしトリューニヒトの答えは冷酷と言ってよかった。
「全滅しても構わんよ」
「!」

「昨年の戦死者の数を知っているか?」
「……確か二百万近かったはずだ」
「そう、百九十七万人だ」
トリューニヒト
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