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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十六話 和平への道 (その2)
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んだ」
「本当に?」
トリューニヒトは頷いた。帝国を倒せる? 本気か?

「例の要塞の件は知っているだろう」
「ああ、眉唾ものだがな」
馬鹿げた案だった。到底本気だとは思えない。
「宇宙艦隊司令部は帝国が本気であれを運ぼうとしていると思っている」

まさか? 私はトリューニヒトの顔を見たが、彼はゆっくりと頷いた。
「当初、フェザーンからもたらされた設計資料を分析した軍の技術部は発想は認めたが、設計資料自体には不審点が多いと判断した」

「……」
「しかし、先日フェザーンから改めて送られてきた設計資料とワープ・エンジンの取り付け部分の設計図を見た軍の技術部は実用可能だと判断したんだ」

「つまり、それで宇宙艦隊司令部は帝国は本気だと判断したのか」
自分の声がかすれているのが分かる。
「そういうことだ」
トリューニヒトは溜息と共に私の言葉を肯定した。

「そして、帝国がイゼルローン回廊を塞ごうとしているのは、国防に自信が無いからだと考えている」
「どういうことだ?」

「帝国の宇宙艦隊司令官と副司令長官は若く経験不足だ。そのせいで軍を掌握しきれないでいると言うんだ」
「本当か? それは」

帝国の宇宙艦隊司令長官、副司令長官が若年だという事は知っている。しかし軍をまとめきれない、そんな事が有るのか?
「私にはわからない。しかし彼らはそう思っている」

どう考えればいいのだろう、好機なのか、それとも罠なのか、シトレは敵の司令長官を恐ろしい相手だと言っていた。シトレが判断を誤ることは殆ど無い、これは罠の可能性が高い……。そう考えているとトリューニヒトが言葉を発した。

「それともう一つは、軍内部の勢力争いだ。ドーソンをはじめ宇宙艦隊司令部はかなり焦っている。ドーソンは司令長官をウランフやボロディンに奪われると思っている。そして参謀達もだ。彼らは此処最近負け続きだからな」

「馬鹿な、そんな事で出兵しようとするのか。其処までして地位を守りたいのか」
「誰だって、地位や権力を守りたいと思うものさ。自分が追われる立場にならなければ判らないだけだ」

沈黙が落ちた。私とトリューニヒトは時に眼を合わせ、時にあらぬほうを見た。この状況をどう考えればいいのか……。トリューニヒトが躊躇いながら口を開いた。

「君はサンフォードの引き下ろしを画策したか?」
「……ああ」
「そうか……」

「それがどうかしたか?」
「実は私もサンフォードの退き下ろしを謀った」
「……まさか!」

「そうだ、その動きがサンフォードに漏れた」
トリューニヒトの顔が苦しげに歪む。
「なんてことだ……」

「主戦派の私と和平派の君が引き下ろしに動いたんだ、サンフォードは恐怖を感じたろう。それで軍の出兵計画を受け
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