暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十五話 なりたいから
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……そう思いながら、大地を蹴り上げた。


*****


「終わった、みたいだね」

《ええ。 お疲れ様です、マスター》

「うん。 お疲れ様、レイジングハート」

 レイジングハートから指示を貰って、洞窟に砲撃を放った後、すぐに別の音が洞窟から響いてきた。

 それが小伊坂くんの魔法だってすぐに分かって、安心して……ほんの少しだけ、辛い。

 私は結局、二発の砲撃を放っただけで、それも小伊坂くんやレイジングハートの指示やサポートなしじゃできなかった。

 魔法を使えるようになってまだほんの数日。

 だからきっと誰も、私のことを責めない。

 責めてくれない。

 私はまだ、私の力不足を許されてしまう。

 それが辛かった。

 もっと私にできることがあれば、小伊坂くんに無茶をさせずに済んだんじゃないかって。

 そう思ったから。

「レイジングハート、聞いてもいい?」

《なんでしょうか?》

「私は、強くなれるかな?」

 私は強くなりたいと思った。

 彼のように。

 真っ直ぐ、速く駆け抜ける彼と一緒に飛べるようになりたいから。

 そんな私にレイジングハートはいつものように淡々と答えてくれた。

《全てはマスター次第ですが……マスターは、強くなれます》

 ほんの少しだけ力強いものを感じる言葉に、私は気づけば笑顔で頷いていた。

「うん、ありがとう」

 迷いが振り払えたわけじゃない。

 まだ、自分の力不足に納得できたわけじゃない。

 だけどほんの少しだけ、楽になった。

 そして見えた気がした。

 これからの私がどうなりたいか。

 どうあるべきか。

 なりたいものが、ほんの少しだけ……見えた気がした。
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