雨夜-レイニーナイト-part5/裏切りの代償
[9/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
下賤な小娘よ。まんまと騙されおって…」
恩人だと思っていた男は、そんなミシェルを…たとえその身を闇に落としてでも国のために、両親のために、恩人のために戦ってきた彼女を鼻で笑い飛ばした。
「…なんで、あんたみたいな人間がいるんだ…あんたみたいな…あんたみたいな奴が!!」
サイトは、声を荒げながらリッシュモンに向かって叫んだ。
「わしはただ裕福に暮らしたいだけよ。尽きることのない財力と、脅かされることのない権力…これこそがこの世における絶対的幸福だ。だが、一人の人間が幸福になるには、常に誰かを犠牲にせねばならん。その犠牲がたまたまそこの小娘共と、それに纏わるものだっただけのことよ」
これがリッシュモンの本性なのだ。ミシェルが考えているような男でもなかった。自分が幸福に…贅沢になるために、他者を平気で利用し、虐殺行為まで働かせる卑劣な男だったのだ。
「銃士隊隊長、貴様にも教えてやろう。貴様の故郷…ダングルテールのこともな」
それを聞いてアニエスの眉がピクリと動いた。
「あの村には新教徒…つまりブリミル教と異なる宗教が信仰されていた。だがそれはブリミル教徒にとって、始祖の意思に背く無神論者と同じ。ブリミル教の総本山であるロマリアがそやつらを消すために莫大な報奨金を用意したのだ。そしてわしは莫大な金を手に入れるために、あの村を消させたのだよ。
ミシェルの家も同じよ。あやつの父は生意気にもわしに逆らったのだ。おとなしく奴が管理している軍資金をわしに献上しておれば、奴も娘を一人置いて死ぬこともなかったというのに…。
そうとも知らずにミシェルは父の無実を信じていると言っただけで、わしを恩人と崇め働いてくれたよ。実に役に立ってこれた…役に立ってくれたよ…。
ふははははは!!愚かすぎて笑わずにはおれんわ!」
「……ッ!!!!!!」
なんの詫びれもなくリッシュモンは言い切った。
酷過ぎる。自分のぜいたくな暮らしのために、同じ人間を利用し殺し、傷つけるなんて…。
サイトはミシェルを見る。彼女は、信じていた人からも裏切られ、自失ともいえるような絶望の表情を浮かべて座り込んだままだ。怒りで身を震わせた。ミシェルさんもアニエスさんも、こんな男の醜い野望と欲望のために、人生をめちゃくちゃにされたというのか。
侵略星人クラスの非道で残虐だ!
許さない…!!
サイトは前を見て、殺意ともいえる激情に駆られそうになった。すると、彼の後ろからアニエスが肩をつかんできた。
「…サイト、お前は手を出すな。この男は…私が殺す」
アニエスは銃口を向けながらサイトの前に立つ。
「ダングルテールを滅ぼしたこと、罪を着せられたミシェルの父君を控訴した見返りに、ロマリアの宗教庁から一体いくらの金をもらった?」
「お前が神を信仰することと、わしが金を慕うことにどんな違いがあ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ