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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十五話 和平への道 (その1)
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「ドーソンか、だからあの男を司令長官にするのは止めろと言ったんだ」
私とトリューニヒトの間でドーソンを宇宙艦隊司令長官にすることはかなり揉めた。

「そう言うな。あの時は帝国が攻勢を強めるとは思わなかったんだ。それならドーソンの方が扱い易い。彼を中心に宇宙艦隊司令部の主戦派が集結するなんて事は無いからな。君だって最後は納得したじゃないか」

その通りだ。前任者のロボスはどうにも戦争好きだった。能力が有る所為でやたらと出兵したがった。シトレに対する競争意識もあったのだろう。それに宇宙艦隊司令部の主戦派が同調した。あれに比べれば戦争に自信の無いドーソンの方が扱い易いと判断したのは事実だ。

シトレを宇宙艦隊司令長官にと言う話もあったが、これも問題だった。シトレは実力がありすぎる。彼が実戦部隊を握った場合、彼がクーデターを起す可能性を考えざるを得なかった。

馬鹿げた考えだとは分っている。シトレの性格は分っている、そんな人間ではないという事も。だが、今の同盟政府の状況は酷すぎる。収賄、汚職、政治家たちの質の劣化。彼がそれに義憤を生じてクーデターを起したら?

多くの人間が彼に従うだろう。その事を考えると彼を司令長官には出来なかった。しかし今になって見れば彼を宇宙艦隊司令長官にすべきだったのだろうか? 彼なら主戦派である宇宙艦隊司令部を和平にまとめる事が出来たかもしれない。

「レベロ、イゼルローンが落ちたばかりだ。みな興奮している、少し冷却期間を置くべきだと思う」
「冷却期間か。確かにそうかもしれんが……」

「少なくともこちらから積極的に出なければ、かなり国力を回復できるんじゃないか」
「それはそうだが、それで満足してもらっては困る」

「分っている。イゼルローン要塞がこちらの手に入ったんだ。軍を縮小して民間に人を戻してもいい。何か良い理由はないか?」
「そうだな、ホアンに相談してみよう」

「レベロ、和平を結ぶなら軍部だけじゃ駄目だ」
「サンフォード議長か」
「ああ、議長を替える必要が有る。少なくとも君か、私か、ホアンが議長になるべきだ」

「しかし、今すぐ替えられるか」
「今は難しいだろう。しかし百五十年続いた戦争を終わらせるんだ。国民だって簡単に賛成するかどうか……、余程の覚悟が要るはずだ。トップがふらついては無理だ」

確かに彼の言うとおりだ。あの議長を何とかしないといけないだろう。トリューニヒトがやると目立ちすぎる。私が裏で動くべきだな。それも早急にだ……。


■ 宇宙暦796年6月20日   自由惑星同盟統合作戦本部 ヤン・ウェンリー

「ヤン少将、少しは落ち着いたかね」
「ええ、なんとか」
「そうか、それは良かった」

シトレ本部長が上機嫌で応対してくれた。イゼ
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