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八神家の養父切嗣
五十二話:旧友
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ジアスとオーリスを守るようにドゥーエに立ち塞がるゼスト。その口ぶりに自身の情報が漏れていたことを悟り訝しげな表情をするドゥーエ。彼女は勿論、姉のウーノでさえ徹底して自分の行動は隠していたはずなのだ。

「さて……俺とお前が敵対しているように貴様らは一枚岩ではないからな」
「あの男ですか? ドクターに従っていれば何度でも人が救える(・・・・・)というのに、困ったものね」
「貴様らの言う救いも碌なものではないのだろう」

 ドゥーエの情報を流していたのは切嗣である。本来であれば必要のないレジアスへの挑発を行ったのも暗に彼女が忍び込んでいることを知らせるためである。切嗣の目的は敵を完全に排除したうえで願いを叶えることであるので敵と敵をぶつけ合わせて戦力を削る工作も行っていたのだ。もっとも、今回の件についてはスバルを助けた空港火災の件でのお礼返しの意味も込められているのだが。

「何はともあれ邪魔をするのなら始末するだけ」
「……やれるものならな」

 かぎ爪を光らせ、獰猛な獣のように目を細めるドゥーエに対し、ゼストは自然な構えで立つ。一秒、一分、はたまた一時間かも分からぬ時間の中でお互いに隙を狙う。どちらも勝負を長引かせるつもりはない。故に戦いは一撃で決まる。緊張と圧力が極限まで高まり怯えたオーリスが身じろぎし僅かな音が起きた瞬間に―――両者共に動き出した。

「はあっ!」
「ふん…!」

 速かったのはドゥーエであった。姉妹から受け継いだ戦闘データを基に生み出された最速の動きと最高の一撃。全てがデータ通りに行き、その爪は容赦なくゼストの身を引き裂こうとする。だが、ゼストの太刀は最後の一瞬で容易く彼女の予想を上回り―――一閃した。

「な…ッ!?」

 驚き目を見開く彼女の目の前でその爪は容易く砕かれ、血が舞い踊った。咄嗟に防御に使った爪のおかげか、はたまたゼストが命までは奪う気が無かったからなのか彼女の命はまだある。しかし、それだけであった。戦闘機人と言えど動くことができない程の重傷を負わされたのだ。勝負はここに決まった。

「ま…さか……私の戦闘データは…妹達の経験を基にした完璧なものなのに……」
「お前達の技術について俺はよく知らんが……高々数年の戦闘データで騎士に勝とうと思ったのは間違いだったな」

 同じ戦闘機人同士でデータを共有し、自分が経験したのと同じ効果を得る。それは素晴らしい機能であり人間の何倍ものスピードで成長することができるだろう。しかしながら、今回は相手が悪かった。彼女達の稼働歴と同じほど、否、それ以上に戦場で生きてきた騎士と相対したのだ。彼女達が集めてきたデータなど優に上回る経験を保持する者に勝てる道理はない。

「じっとしていればこうなることもなかったものを……」
「く…っ」

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