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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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だディアベルが悪いのよ」
「こ、……いつ!!」
男がとうとう我慢の限界を迎えたのか、憤怒を前面に出し、額に青筋を立てた。瞬間、腕が私へと伸び、ガシッと首を掴まれる。瞬きほどの時間で空中に吊り上げられた。両脚が完全に浮いて、足先がブラブラと揺れている。息が詰まって、さすがに顔をしかめた。
これが、仮初の世界で良かった。
「……っ」
「お前が、お前がいなければ……ッ!」
「また……、そう、やって、全体の責任を、押し、つけ……る、のね」
言葉が途切れ途切れになりつつも、今は下の位置にある男の両目をしっかりと見据える。私は特に抵抗などしていない。けれど、首へ掛けられていた圧力が僅かに緩んだ。
「意味が分からない!」
「……ふふ、愚か……で、かわい、そう」
「――――く、そが!」
視界がグルンと回った。背中を強かに打ち付ける。一瞬、全ての感覚が遠ざかった。
「謝罪も、反省すらしないなんて……、何て奴なんだ! 自分でやったこと、何とも思ってないのか!」
「…………」
バラバラと散らばった自身の黒髪が、視界いっぱいに見える。石畳の床を背景に、自身の白い手も映り込んでいた。
ああ私は、今、地面に転がされているのか。
認識出来たところで、腕に力が入りそうにない。体の半身が、ひどく冷たかった。このまま寝てしまおうか。……いや、それは出来ないな。ふと浮かんで泡のように消えた滑稽な思考に、くつりと笑う。
それが、さらに男の神経を逆撫でたらしい。
大きな影が落ちてきて、それの正体を確かめるべく目だけをそろりと動かす。すると、凹凸の激しい、硬そうな靴底が、眼前に迫っていた。
これは蹴られるな。痛いのだろうか、ああでも、そうだ、この世界には痛覚は無いのだ。だったら大丈夫か。
ぼんやりと考えながら、近づいてくるソレを眺める。薄く笑って、目を閉じた。
訪れるだろう衝撃を、流すために――――。
「もう、その辺でいいんじゃねえか」
その声に、パッと目を見開いた。慌てて視線を持ち上げれば、そこにはこの数日で見慣れた褐色の肌。
「どう、して……」
エギル。その後ろには、ルークをはじめとした、己がついさっきまでパーティーを組んでいた面々が居た。一様に表情を強張らせ、痛ましそうに私を見詰めている。
「お前は……、確か、エギル」
「ああ、そうだ」
――――まずい。咄嗟に、そう思った。
エギルは事前の攻略会議で、ベータテスターを庇う発言をしていた。堂々と話した内容のせいもあるだろうが、彼のその容姿も相まって、この男はエギルの名前を記憶していたのだろう。
いや、それは良い。良くは無いが、まあ良い。今現在、それほどベータテスターへ恨みは向いていない。大部分は≪ビーター≫へと対象が移ったし、その分も今この場では私
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