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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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ルドへ出れば、それだけでおそらく半永久的に身を隠せるだろう。しかし、それをやればこの世界に来た意味が無くなるし、私のポリシーにも反する。よって、考える間もなくコンマ5秒で却下だった。
それ以外ならば、一番手っ取り早いのは、容姿を変える――――、たとえば髪型を変えることだろう。案外、思い込みでなんとかなったりするものである。
だが、それだけで済むのならば、今日一日中あんなに神経をすり減らしながら、キリトの事を気にはしていない。
あの人のことだ。やけに聡い所もあるのだから、中途半端には出来ない。本気でやらなければ、足元をすくわれる。
故に、もし髪型を変えるのであれば、色をピンクやらオレンジやら、私のイメージに絶対に合わないものを選んで変えなければならないだろう。だがそのためのアイテムは、おいそれと手に入るものではないだろう。今こうしている間にもばったり会う可能性が十分にあるのだ。
私の存在――――、たとえそれがまだ“紅葉”であるとは認識されていなくても、“黒髪の少女”がいると、おそらく知られてしまっている。あまり考えたくはないが、最悪の場合、私の位置取りが失敗して、あるいは人伝いに、“弓使いである”、という情報もキリトに渡ってしまったかもしれない。
だからこそ、悠長には構えてはいられないのだ。ことは急を要する。即刻対応するべきことなのだ。
…………ほんの、十数秒でいい。
それだけ誤魔化せれば、他人のふりをしてすれ違うことが出来る。あとは、私の腕次第だというのに。この壁が、高いのもまた事実。
「“性格”さえ決まってしまえば、そこからは私の得意分野なのだけれど……」
するりと、そんなことがこぼれた。そんなことを言っても現状は変わらないのに、と自分で突っ込む。しかし、すぐに、別の事から自嘲的な笑みを作った。
「……得意分野、か……」
昔は、純粋だった。ただ真っ直ぐに、“それ”を楽しんでいた。けれど、今は唯一、別の意味で手放せないものとなっている。
――――ふと、幼い日の事を思い出した。
あれは、家族全員で出かけた日の事だ。とても印象的だったので、全く色あせることなく、鮮やかに記憶に残っている。
その日、私たちは女性のみで構成されている歌劇団の公演を見に行った。とても優美で、凛々しくて。そして、繊細さや力強さも兼ね備えている。私はすぐにその独特な世界に引き込まれていて、その空間が始終輝いて見えていた。
そして、和人――――キリトに出したクイズ。あのことも、はっきりと覚えている。といっても、彼は答えが解ることはないだろうし、私が正解を教えることもないだろう。
「……何、思い出しているのかしら」
今更。
そう、今更だった。
息を深く吸い、落ち着くためになるべく長く吐き出す。空から視線をはずし、流れる
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