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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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バーか!?」
「……え、はい」
 質問の意図が全くもって分からないが、過剰なほどの勢いに圧されるようにして、思わず肯定してしまった。心の中で舌打ちする。隣を見れば、アスナが顔を先ほど「幽霊」という単語を聞いた時以上に、しかも不快そうに顔を顰めている。私も同じような表情になっていると思うけれど。
 だが、すぐに軌道修正し、私はにこやかな笑顔を作る。そして、なるべくこれ以上は面倒事を起こしたくないので、波風立てないように和やかに聞いた。
「それが、いかがなさいました?」
「あ、ああ……、実は、さっき他の攻略メンバーが帰ってきたんで、アクティベートしたのは誰だって聞いたんだ。そうしたら、かなり不機嫌そうに“そんな奴いない”って言われちまって」
 ……どういうこと?
 その内容に呆気にとられ、思考が停止する。しかし、そう首を傾げたのはほんの少しの間だけで、すぐに状況を理解した。
 おおかた、≪ビーター≫と蔑むプレイヤーが、イラつきながらつい言ってしまったのだろう。
 本当に、ごく一部の人間だけだろうが、大馬鹿だと思う。まだ言っているのかと、ほとほと呆れてしまった。
 自然と手に力が入っていくのを感じながらも、表面は笑顔を保ち、クスリと笑みを作ってから、男に言った。
「ええ、そうですよ」
 未だに目を丸くしているアスナの腕を引き、その場を逃げるように去った。
 そのまま主街区のゲートを潜り、人の波からある程度離れた所でアスナに向き直り、先ほど言えなかった別れの言葉を口にする。アスナは残念そうに眉を顰めたかと思うと、
「ねえ、キカ。私とフレンド登録しない?」
「……え、ええ、良いけれど」
「決まりね。申請送るから、許可してよ」
 言うが早いか、アスナとフレンド登録をするか否かを問うメッセージタブが現れて、思わず苦笑してしまう。「承認」をタップして、しっかりと彼女の目を見据えた。
「よろしく、アスナ」
「うん。こちらこそ、これからよろしくね。キカ」
 くすくす、くすくす。
 和やかに笑い合って、握手を交わした。
「じゃあ、またね」
「ええ」
 アスナが身を翻す。彼女の背中がどんどん遠くなっていくのを目で追うが、人混みに呑まれ視認出来なくなったところで視線を外した。小さく息をつく。
 闇が増してきた空を見上げてみるが、今日の天気は曇りと設定されたようで、濁っていて星は望めそうにない。 
「……さて、どうしましょうか」
 “彼” ――――、キリトから、どうやって身を隠すか。
 それは、キリトの姿を見つけてから考えていることなのだが、これがなかなか良案が思いつかない。
 極論、どこかに必要最低限以外は引きこもってしまえばいい。幸い、私は食事を取らなくても平気だし、泊まれるような場所をなんとか確保さえ出来るよう、度々フィー
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