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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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ら、間を埋めるために頬を掻き、次の手を考えていると、
「キリト」
 それを、見事に遮断された。まさにクリーンヒット。思考が止まる。
「え?」
  口からそう音が漏れ、思わず隣を見ると、空を遠い目で見上げているアスナの姿があった。そっと、彼女を盗み見ると、どこかやるせなさが漂っていて、しかし再び引き結ばれていた唇が開いた。
「だから、“キリト”よ。あの人の名前」
「……そう。教えてくれてありがとう、アスナ」
目を伏せ、彼女から目の前の風景へ顔を向ける。
 ――――キリト、ね。
音には出さないように、その名前を刻み付けるように心の中でつぶやいた。
 なんて単純なんだろう。本名の最初と最後を取って3文字。
 まあ私も同じように単純と言えば単純だ。ただそれが、自分の名前ではないだけで。
「……私も、同じようなものね……」
 ぽつりと、水滴が一滴落ちるように小さくごちる。
「……ん、何か言った?」
 なんと、落ちたしずくが掬い上げられてしまった。けれども、指の隙間から零れさせる。
「いいえ? 何も言っていないわよ」
 不思議そうにアスナが首を傾けるので、「幽霊じゃないですか」と冗談めかして言ってみた。すると、予想以上に彼女の顔が引きつり、
「……や、やっぱり気のせいかも!」
 上ずった声を上げ、途端に必要以上に手の振りが大きくなり、歩き方もどこか硬い。
 ……あ、こういう話題弱いんだ。
 意外過ぎる一面で、なんだか得をしたような気分になる。 私は含み笑いを作りながら、助け船を出すように正面を指差した。
「ほら、もうすぐ主街区に着くみたいよ」
「そ、そうね。早く休みたいわ」
 まだ若干口調が不自然だが、平静を装いたいのか腰に手をあて、ふぅ、とアスナが息をついた。そんな彼女を横目で見て、苦笑いを作ってから、息を浅く吸った。「じゃあここで」、と、そう別れの言葉を音にするため口を開く。
「……あれ、どうしたのかしら。ちょっと様子が変よ」
 だが、アスナの一言によって閉口することになった。彼女が見ている方向を釣られるように見遣る。
 そこには、何人かのプレイヤーが頭を捻りながら何事か話し込んでいる。その雰囲気は、どこからどう見ても異様だ。
 すると、その数人の内、一人の男がこちらに気付いた。必然的にバチリと視線が絡まってしまう。そのことで、本能的に足が動き、後ろに半歩下がった。アスナと動きが完全に被る。しかし、次の瞬間。
 びゅん!
 そんな音がしそうな勢いで詰め寄られ、すぐに意味はなくなってしまう。
 ……あぁ、この人敏捷型かな。なんて、あまりに呑気に、場違いなことが脳裏をかすめる。だが、すぐにそんなこと考えている場合ではないと、思考回路を修正して、だがしかし、
「な、なあ、君たち、さっきのボス戦攻略戦のメン
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