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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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取ったのだ。
 上手く理由が飲み込めないのか、皆一様に首を傾げる。私はそれを見て「深く考えなくてもいい」と言葉を掛けようと口を開き――――、しかしそれは中断された。
 わぁぁぁぁあああっと、再び悲鳴が上がる。バッとそちらを見れば、先刻から孤軍奮闘していた二人の内、“彼”がバランスを崩したらしい。何とか持ちこたえたようだが、ボスの攻撃を相殺し続けるのに、集中力の限界が来たようだ。次何かあれば、今度こそ危ない。
 また、私の目の前で死んでしまう。
 その細くて黒い後ろ姿に、心臓がザワリと撫でられた。思わず舌打ちをし、何故か震える足をなだめながら、顎でくいとそちらを指した。
「……ほら早く行ってあげないと、あの片手剣使いサンと細剣使いサン、死んでしまいますよ」
「――――ッ!」
 呆けていた顔をすぐに引き締めたエギルが、バッと走り出す。私を追い越した時に生じた小さな風が、髪をふわりと舞いあげた。だんだんと遠くなる彼の背中を見ながら、両手を強く握りしめる。
 見慣れた横顔が、苦しさで歪んでいた。
「……あぁ、もう!」
 イライラ感が頂点に達し、ゲージをぶち抜いた。途端に、自分の中で何かが爆発する。いつもよりかなり雑にウィンドウを操作して弓と矢のホルダーを装備し、“彼”と私の対角線上にエギルが入るよう立った。そして、体勢をぎりぎりまで落とし数本矢をつがえ、離す。
 スキル≪ウィンド・レイン≫。
放たれたいくつもの光が雨のように降り注いだ。的が大きいせいもあり、吸い込まれるようにすべて命中する。エギルも間に合ったようで、闇色の少年に命中しそうになっていた攻撃を紙一重で防いでいた。何故か、己の唇から小さく息が漏れる。
「……今回だけだから」
 そう、彼を助けるのはこれっきりだ。この場を切り抜けるための、苦肉の策。
 ちらりと、“彼”を見る。
 ……まだいけるか。――――否、不可能だ。これ以上弓を装備していては、ただでさえ目立つというものなのだから、遠目でも私だとばれてしまう。
 何しろ、昨日の出来事のために、十分な対策が出来ていない。せいぜい、向こうでは滅多にしていなかったポニーテールにするので精一杯だった。後ろ姿ならこれで誤魔化せているだろうが、横顔を見られればおそらくアウト。正面なんてみられた時には、もう“誤魔化す”の“ご”の字もつけられない程、目も当てられない状況になるだろう。
 ――――と判断してすぐに、曲刀にすばやく持ち替えた。
 そして、“彼”に背を向けるように立ち、床を蹴り上げ、すでにボスと向かっているルークの隣へ行く。そして、今度はルークが間に入るように位置取った。
「しばらく、こうさせてもらうわ」
 小さくつぶやきながら、全神経を注ぎ込み、感覚を研ぎ澄ませる。
今の最重要項目は、もちろんボス。こちらは、
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