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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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に気が付いた。
 ……あぁ、そうか。
それを見て、私は真っ先にそう思った。理由は単純明快。諦める者も増えているのだと悟ったからだ。
 挑戦者が減少していき、ベータテスト終盤ではほとんどクエストに挑む者自体がいなくなったのも、ある意味必然だろう。そして、そのことによってついた別名――――、というよりも付け足された名称は、≪クリア不可能のクエスト・弓術≫。
 さらに、習得者がいない理由が少なくとももう一つある。それは、“利便性が低い”ということだ。
 モンスターに接近されれば攻撃も出来ないし、肝心な弓と矢は、≪弓術≫を習得している鍛冶師にしか作成できない。すなわち、両方のスキルを習得しているプレイヤーを探すか、自分が≪鍛冶≫を取り、なおかつそれの経験値もあげていかなくてはならない。おそらく前者は、大量の砂の中から特定の一粒を見つけることくらいに困難なことだろう。よって、消去方で後者の方法をとるしかなくなるのだ。
 これらのことが相まってか、私があの村にいた一ヵ月、誰一人としてクエストを受けに来たものはいなかったと思う。……まあ実際は、私がそのクエストを4日ほどでクリアして近くのフィールドへ出ていたので、その間のことは知らないが。
「――――これで解ったかしら?私が左手に曲刀を持っている理由」
 エギルが、納得はしたが理解は出来ない、と口に出さなくとも言っているような、苦いものを顔に浮かべた。
「あぁ、なんとなく。……だいぶ恐ろしいが」
 矢で倒し切れず、敵の接近を許してしまったら。そうなってしまうと、逃げるか、弓矢の間合いまで下がらなければ、一方的に攻撃を受けることになる。それはつまり、死へ直結する。
 これを回避、または解決するために考え出した事は、副武装を装備とすること。しかし、すばやく出来なければ意味を成さないので、≪曲刀≫の経験値を上げ、≪クイックチェンジ≫を真っ先に取り、それをスムーズに行使するために左手に武器を持った。……それだけのことだ。
 ちなみに、今までエギル達の前で弓矢を使わなかったのは、単純に目立ちたくなかったからだ。別段彼らを信用していないわけではないが、出来るなら初期の内は、知っている人間を最小限に止めたかった。
 だがそれは、先ほどの攻撃で意味はなくなった。ここからは、いかにして“彼”に弓矢を使っている姿を見られないかということにフェーズを移動する。
「だが、そこまでして、なんで弓を使うんだ」
 ……その答えは、いたってシンプルだ。私は微笑みを作り、彼らに向ける。
「……私は向こうで、弓道は得意ではあったけれども、好きではなかったからよ」
 スグと一緒に剣道をしている時の方が、有意義だと思っていたから。無理やり習わされていた弓道よりも、剣道の方が楽しいと感じていたから。
 だから私は、弓を手に
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