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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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 きちんと筋の通った思考回路へ戻ることが出来たのは、この部屋に何人いるのだろうか。今は前に出てくれた黒曜石色の少年と栗色の少女によって何とかこの場は繋がっているが、そう長くは続かない。かといって、こんなにグラグラとした精神状態で彼らが出て行ったとしても、まともに立ち回ることなんて出来ないだろう。ボスの良い餌食だ。
 さてどうするかと、この場を打開する解決策を求めるために、考えを巡らす。すると、おずおずといった様子で私へ声が掛けられた。いくらか顔色がマシになったルークだった。
「……なあ、キカ。ここで話すべきじゃないってことは分かってるけど、ひとつ聞いてもいいか」
「何かしら」
「…………さっきお前が使ったやつ、あれは何だ」
 強張った表情と声で問われ、私はようやく自身の“左手”に視線を下ろす。
 ああ、いけない。忘れていた。
 私はさっきと同じように、利き手である“右手”の人差し指と中指を下へ振った。≪クイックチェンジ≫ですぐに曲刀へ持ち替えながら、ゆっくりとルークへ視線を戻す。ポニーテールにしている黒髪が揺れ、毛先が視界に入った。
「……エクストラスキル≪弓術≫」
 男たちの表情に、驚きの色と感嘆が混じっていく。そして、目を真ん丸に見開いたルークが、絞り出すようにつぶやいた。
「……それって、習得は不可能って言われていたスキルじゃねぇか……!」
「そうね。……けれど、それでも私の主武装は、“弓”よ」
 もし、剣だけと言われてきた世界に遠距離武器が使えるスキルが存在していたら、ゲーマーたちが注目しないなんてことがあるだろうか。
 このスキル自体は、ベータテスト時のかなり初期に発見された。ちなみにクエスト発生場所は、私がいた寂れた村だ。
 そのイレギュラー性から、電光石火の速さですぐにプレイヤー内で広まり、これまた光速のごとくの早さでインターネット上でも話題になっていた。……これのおかげで、私がこのスキルの存在を知ることが出来たと言っても過言では無いだろう。
 さらにベータ時のトッププレイヤーが挑戦しても習得出来ないということも手伝って、人々を加熱し、変な意地を張る人も続出してあの寂しい村が人で溢れかえる事態も発生。もはや弓を使いたいのではなく、ただ単純にスキルを取得したいと考える人たちも現れた。しかも嘘か本当か解らない情報まで流れ出すことにもなってしまった。それを良しとしなかったのかは定かではないが、公式で≪弓術≫の詳細が正式に発表された後は、余計にこれらのことも加速していったような気がする。そのせいか、――――いや、多分これは、原因としては氷山の一角だろう。成るべくしてそうなったのだ。
 私は呆れながらも、情報収集のためにネットの海を彷徨っていた。そして、徐々にブログやらなんやらの件数が、日を追うごとに少なくなっていくこと
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