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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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き渡った。
「だ……、駄目だ! 全力で――――!」
 跳べ、だとか、避けろ、だとか続くはずであっただろう彼の言葉は、そこで途切れた。私の放ったソレが、ディアベルと接触するかしないかの距離感で、ボスと彼らの間に立ち塞がったのだ。それに驚いて彼らはそこから飛び退いたが、……しかし、訪れたのはあまりに無情な一瞬だった。
 身体のバランスを取り戻し損ねたC隊が、ボスのスキル攻撃を食らう。まともに攻撃された彼らの身体が吹っ飛ばされた。
「やばい……ッ」
「追撃が!!」
 エギルが前へ飛び出す。私たちもそれに続こうとしたが、イルファングが剣を振るう方が早かった。鋭い三連撃の攻撃が、ディアベルを飲み込む。
 彼の姿が掻き消えた。――――否、かなり後方の床に叩きつけられたのだ。恐々と後ろを振り返れば、青髪の男へ駆け寄る黒髪の少年の後ろ姿が視界に入った。
 けれどもうきっと、遅い。私は耐え切れずに目を伏せる。昨日目の当たりにした光景が、まざまざと瞼の裏に蘇った。
 そして成す術もないまま、ガラスが壊れるような無慈悲な音が悲しく響いた。
 ……これで4人目だった。 私の目の前で死んだ――――、私が助けられなかった人の人数。昨日の男と少女、そしてネージュに、……今回の指揮官であるディアベル。
 届かなかった。私とそっくりな少年の目の前でその姿を青い欠片に転じさせる様を、ただ見ていることしか出来なかった。
 あまりの出来事に、正常な思考が出来ている人はほとんどいない。みな完全に攻撃の手を止めてしまった。このままでは、自分たちはもちろん、他の人間も死んでしまう可能性が高い。
「……エギル」
「…………あ……」
「エギル!! ぼさっとしないで!」
 肩を跳ねさせた巨漢を睨み上げて、鋭く言い放つ。私の勢いに気圧されたのか一瞬エギルはたじろいだが、すぐに表情を引き締めて私を見つめ返してくる。
「エギル、あなたはこのパーティーのリーダーよ。……自分のすべきことは、分かっているでしょう?」
「ああ」
 ハッとしたような表情へ変えた色黒の彼は、すぐさま頷いて仲間へ向き直った。心こころあらずの様子の彼らを、壁際まで引き連れていくようだ。チラリと後方を確認すれば、黒と眩い茶の影がボスへ突っ込んでいく。あまり時間は無い。未だパニック状態に陥っている自身のパーティーメンバーへ視線を戻し、眉を顰めた。
「いいか、今の内に回復するんだ」
「わ、分かった……」
「でも、エギル。い、今……」
「……そうだ、ディアベルは死んだ。だが、切り替えなければ俺たちも死ぬ」
「…………う」
 男たちが顔を青ざめさせ、言葉を詰まらせる。私は回復ポーションを飲み下すと腕を胸の前で組み、彼らを真っ直ぐ見据えた。
「そうよ。……このままじゃ、きっと大勢が命を落とすことになる」

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