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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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が善意で気に掛けてくれているとしても、私は容認出来ない。
「これからボス戦なのよ。他人のことを気にしている余裕なんてあるのかしら」
 不気味な雰囲気を漂わせる迷宮区の地を進みながらもチラチラと視線が向けられるので、耐え切れずピシャリと言い放つ。正直、そんな風に見られても迷惑なだけだった。それに私たちの空気が他の隊へ伝播してしまう可能性だってある。戦闘に影響を出しなくない。少なくとも今だけは、これから行われる重要な戦いへ目を向けてほしい。……私は、別に何ともないのだから。
「…………ああ」
 エギルが固い表情で頷く。『せっかく心配してやってるのに』、だとか思っているのだろうか。イラついているのだろうか。
「……ごめんなさい、ありがとう」
 ツキリと痛んだ胸には知らんふり。目を逸らして、感覚を断ち切る。
 集中しなければいけない。バラバラになった思考を一本にまとめ上げるのだ。余計なものはいらないのだから。
 私は口をキツく引き結び、前を見据えた。私たちが目指す部屋は、もう少し先だった。


 ――――戦闘は順調に進んでいるように、見えていたのに。
 私はふと感じた違和感に眉を顰める。何か、何かが引っ掛かる。モヤモヤを抱えたままチラリと遠くにいる“彼”の方を見遣り、そして戦慄した。
「……どうして」
 何故? この位置からでも分かるくらい、そんなに慌てているの。
 咄嗟に彼の視線の先を辿ると、青髪の青年に行きついた。そしてさらに向こうにはこのフロアのボス。その手に握られている武器に、私の目は縫い付けられた。どくん、と心臓が大きく跳ね上がる。
「――――え?」
 あれは本当に、事前情報で聞かされていたタルワールなのか? 以前何かの本に載っていた写真とは、少し違う気がする。いくら作り物とはいえ、剣を重視するこの世界ではビジュアルにはとことん拘るはずだというのに。
 ザワザワと神経を逆撫でするような胸騒ぎが、一層強くなった気がした。私は逸る気持ちを押さえながらもう一度あの少年に視線を戻し、瞬間、おぼろげだったそれは確信へと変わる。
「これは……、やっぱり!!」
 ――――私たちの想定外のことが起こってしまう!
 バッとボスの方へ目を向けた。果敢に突っ込んでいく、C隊の面々。
「……ッ」
 間に合わない。駄目だ、私の位置からでは到底知らせることは出来ない。――――否、ひとつだけ。
 ひとつだけ、方法がある。迷っている時間は無い。
「キカ、何して……っ!?」
 突然右手を振ってウィンドウを表示させた私に、驚愕した声が飛ぶ。しかし、その時にはもう、私の左手には“あるもの”が出現していた。
「お願い、気付いて……ッ!!」
 躊躇いなくソレを放った。青白く輝く細い線が、空間を切り裂く。それと同時に、少年の声が部屋いっぱいに響
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