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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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密かにため息を飲み込み、少女二人のことを意識から追い払いにかかる。
 まあ結局、一時的にとはいえ忘れるなんて、俺には到底不可能なのだが。
「そういえば、昨日のこと、どう思う?」
「へ? 昨日? ……何かあったのか」
 そんな流し目で睨みつけないでくれよ。仕方ないだろ、ずっと迷宮区に籠っていたんだから。
「…………あなた、何も知らないの? よく分からないイベントが勝手に始められてしまって、不幸にも選ばれてしまったプレイヤーのうち、数名が亡くなってしまったそうよ」
「な……っ」
 イベント? 何だ、それは。βテストにそんなものは無かったし、公式サービスが始まるい以前に告知も何もなかったはずだ。
 嫌な汗が頬を伝う。良くないことが起こるような、そんな漠然とした不安が急に俺を襲い始めた。眉を顰めるアスナへさらに言葉を重ねようとした時、周囲のざわめきが一気に静まった。つられて正面を見れば、好青年なディアベルが扉に背を向け立っている。
「……いよいよ始まるわね」
「ああ、そうだな」
 ボス攻略戦の幕が上がった。俺の中に確かな違和感と胸騒ぎを残したまま。
 ――――そしてそれは、最悪の形で現実のものとなる。


 オレンジ色の光が、俺の肩をかすめた。軽くひねっていた体を戻し、すかさず剣を振り下ろす。すると、まるで呼吸音まで合っていそうな錯覚を覚えるほど、アスナがこれ以上にないくらいのタイミングで敵に攻撃をあてた。光の欠片が四散する。それを確認し、彼女とアイコンタクトを交わす。唇を引き結ぶアスナが、静かに頷いた。
 メイン戦場の方をちらりと見て、息をつく。HPバーは現在、3本目の半分を切ったところだ。ここまで特に問題なくHPを削ってきているので、おそらく大丈夫だろう。…そうであってほしい。
 そして、また視線を戻そうと目線を流し、――――しかし糸で縫いつけられてしまったかのように止まった。
 ……ボスの右手。握られている武器。
 その瞬間、電流が体中を駆け巡った。同時に、今までの認識が誤りだったことを悟る。そうして、あの嫌な予感が当たっていたことも。
 はやる気持ちを抑えられずに視線を走らせれば、ボスの正面に青髪の青年。後ろには彼が率いるC隊のメンバーが続いていた。それを視界に捕え、思考よりも口が先に出た。
 もはや悲鳴に近いような声で叫ぶ。
「だ……、駄目だ! 全力で――――!」
 息が詰まった。思考が、動きが全停止する。
 一筋の青い、まるで流星のような真っ直ぐな光が、一直線に彼らへ向かう。それは見事にディアベルの顔をかすめ、ひるんだC隊が後ろへ飛び退いた。
「な……っ!?」
 あれは、ボスの攻撃ではない。ならば誰が、何を。
 あの光が生まれた場所を探そうと、視線が泳いだ。しかしそれはすぐに、強制終了させられること
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