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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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。
それが、少女――――、アスナの流れるような美しい髪の毛だとすぐに気づき、無意識に詰めていた息を吐いた。だが、目の前の彼女はそれが気に入らなかったらしい。軽く横目で睨みながら、
「人の顔を見てため息つかないでくれる?」
おぉ、怖。迫力満点。
「ああ、ごめん。気にしないでくれていいから」
苦笑いを浮かべ、手をひらひらと振りながら、なんとか誤魔化す。誤魔化そうと試みる。それでも何か続けようとするアスナを手で遮ってから、視線を外した。諦めたような息を吐き出すのが、ちらりと聞こえたような気がするが、申し訳ないがスルーさせてもらう。
「……あ」
するとそんな彼女の口から、蚊の鳴くような小さな声が漏れた。もう一度視線を戻すと、かすかに驚きの色を顔に滲ませている。
え、何、何? という半ば興味を携えながら、一応建前は“いぶかしんで”アスナの視線を追った。そこで、俺も、「……お」と音になるような、ならないような声を発する。
――――長い黒髪をポニーテールにして結い上げた女性プレイヤー。
だが、悲しいかな、ここは最後尾なのでよく見えない。首をぐいーっと亀のように伸ばしたが、がっちりした体格の男が後ろに立ち、さらにその姿を捕えることは不可能となった。諦め自然と背伸びしていた少々つらい体制を戻す。
「……あの人、さっき迷宮区に入る時にパーティーの人たちと合流していたわ」
「合流? ……遅刻でもしたのか」
「いえ……、よく分からないけれど」
「体調でも悪かったのかな」
無難な俺の推測に、アスナは首を振って「分からない」と言った。まあそうだよな、と心の中で返し前へ向き直る。
「……私、他にも女性が参加していたなんて、その時まで気付かなかった」
ポツリと、誰にともなく呟いたのか、それとも話しかけられたのか判断が微妙につかない言葉が隣からした。後者だったとしたら、何も反応をしなければ無視したことになってしまう。とりあえず首肯しながら、
「ああ、俺もだ」
……首肯して、首をひねる。何故だか、ほんの少ししか見られなかったあの後ろ姿が引っ掛かるのだ。ちょうど、魚の骨が喉に刺さっているような気がして落ち着かない時と同じような感じ。
しかし、正体をつかむべく奥へ探ろうとしていってもするりと逃れてしまって、しこりのようなものも一緒にどこかへ消えてしまった。なんとなくすっきりしないものが残ってしまったため思わず顔をしかめると、わき腹をつんつんと突かれた。
「ちょっと、本当にさっきから集中できていないわよ。……フィールドを歩いている時も、なんだか上の空だったし。大丈夫なの?」
ぴしゃりとさっき自分で思っていたことを言われ、苦笑する。
「大丈夫」
短く答えながら、視線を落とす。……とても、“従妹”の夢を見たなんて言えないよな。
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