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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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絶対に気を逸らしてはいけない。そして、差なんてあってないようなものだが、第二に“彼”の視線。おそらく、現在進行形で敵の技を先読みし、声を張り上げているのが“彼”だ。ルークが攻撃を受けるのに合わせて私も剣を当てながら、その“音”を頭の中へ叩きこむ。のちのち、役に立つかもしれない。
 手首をひねり、上半身をねじり、時にはステップを踏み、あるいはジャンプする。
 それを、何回繰り返していただろう。もしかしたら、そんなに長い時間ではなかったかもしれない。
 目の前を、栗色の髪がさらりとなびいて、きらめきながら細剣が吸いこまれていった。その流れる動きのあまりの美しさと、エフェクトの輝きに、一瞬気を取られる。
 ……そのせいかもしれない。いや、初めから、この緊張感の中を長時間神経を切り詰め、なおかついくつものことに気を配るなんて芸当、ヒトに出来るわけがなかったのだ。
 いつかはそのしわ寄せが己に牙をむく。
「あっ……!」
「……っ!?」
 何が起きたのか、咄嗟に判断が出来なかった。右に思い切り飛び退いたその瞬間、全く予期していなかった斥力が全身に加わったのだ。
 視界は回り、足元は崩れる。
「……く」
 それでも歯を食いしばってなんとか視線をあげれば、……なんてことだろう。 私と同様に傾くルークの体と、――――迫ってくる野太刀が視界に入った。
「……だめ……っ」
 それは、反射的に。右手を千切れんばかりに伸ばし、彼の体を攻撃の範囲外へ押し出す。
 同時に、景色が飛んだ。
 近くで核爆発でも起こったのかと錯覚するほどの衝撃が襲い、爆音に近いそれが体を振動させ、耳元で轟く。一番上のHPバーがガクンと減ったのを律儀に捕えた時、全身が忠実な重力によって叩きつけられた。
「ぐ、……はっ」
 腹が押し上げられ、吐き気のような強い不快感が迫り上がる。だが、目の前がぼやけるのを感じながらも、両手をつき上体を押し上げた。
 ――――黒いコートが、ひるがえっている。
 ちょうど、ボスの巨体を“彼”が斬りかかっていた。それを見て、内心ホッと息をついた。
 よかった、と、つぶやく。
 ……だって、そうじゃないか。あそこで鉢合わせをしていたら、まず間違いなくバレていた。不本意ではあったが、ボスにぶっ飛ばされてしまって“良かった”と思ったのだ。
 そんな、誰かには言えないようなことを思いつつ、何気なしに自分のHPバーを見て、ギョッとした。さっきの攻撃でガクンと減っていたのは解っていたが、それ以前にも少しずつ減少していたらしい。もうレッドゾーンに差し掛かっていた。
 これは、その他もろもろの事情で戻れないな、と思い、傍観することを決め込む。
 そして、一応ポーションは飲んだが、やはり出番はなく、私のHPがグリーンに入ったところで大量のポリゴン片が四散し
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