第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
孤独の臭いのする少年
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「逃がしはしないぃい……逃がしはしないぞうちはサスケェエエ!!」
砂色の腕が木々をなぎ倒し、何本もの木々が抉られて年輪を晒す。残虐かつ凶暴な笑い声が耳障りに響き、サスケは一瞬で木々をなぎ倒すそのバカ力に目を瞠った。
「うちはサスケェエエエ! 怖いかぁああ? この俺が、怖いかぁあああああ!!」
お前も所詮はあの子供たちと同じということか? ボールを受け取ることすら拒むか? 夜叉丸の後ろで震えて泣き叫ぶのか? あの裏切り者の後ろで。隠れて、そして逃げ出すのか? 耳を塞ぎ、目を塞ぐのか? テマリやカンクロウやバキのように?
「憎しみも殺意も、その恐怖に竦んだのか? お前はその程度の存在だったのか!」
唾液をぴちゃりぴちゃりと滴らせながら問いかける我愛羅に、サスケは瞬間的に思考が停止した。
憎しみも殺意もその恐怖に竦んだのか? お前はその程度の存在だったのか?
まさかそんなわけはない。兄への憎しみと殺意がお前なんかへの恐怖に霞む? 竦む? そんなわけあるか。そんな生半可なものじゃない。父と母の声がする。サスケに来るなというその苦しそうな声。母を守ろうとしたのだろうか、母に覆いかぶさって死んでいた父。器を測るためだといった最愛の兄。今までの姿は全て演技だと言い放った兄。
その程度の憎しみや殺意じゃない。そして自分はその程度の存在として終わるつもりはない。殺してやる。絶対に。一族を抹殺しておいて、何が器を測るため?
「俺と戦えよ。そして確かめろ! ――お前の価値を! 存在を! 実験しろ、答えがほしければ! ――来いッッ!!」
――俺は生かされた。たった一人。何のためにだ?
殺されたうちはの、屍が転がるその中で、サスケは泣いていた。泣いて泣いて泣いていた。怯えて恐れ生にしがみつき、憎み怒り悲しんだ。
――いや、その理由はわかっている。あいつは俺を生かした。一族殺しの罪悪感に苛まれるための存在として! 自分を殺させるための復讐者という存在として!
千の鳥の鳴き声が、サスケの掌で踊り、はじけ飛ぶ。我愛羅がその音に反応して、振り返る。
――俺を選んだんだ!
ぱちぱちぱちぱちぱち。千の鳥の鳴き声がまばゆい光となってはじけとび、サスケを下から照らしあげる。
本番は、これからだ。
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