第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
孤独の臭いのする少年
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りがとう、ねえ君も一緒にあそぼうよなんて言ってくれることを期待していた。儚い期待。ひどく儚い期待。そんなこと言ってくれるわけないのに、でも我愛羅はいつも軋むブランコの上で、夜寝床で、ずっとずっと妄想していた。一緒に遊ばないって誰かが問いかけてくれることを。
でも現実は幼い我愛羅の心を突き刺すだけだった。
――我愛羅だ……!――
――っ我愛羅……!――
――逃げろぉおおおおお!!――
我愛羅とは恐ろしき化け物ということを知っていた子供たちは、一人の子供が叫ぶのと同時に、金縛りが解けたかのように一斉に逃げ出した。
――待って。一人にしないで!――
このボールを渡したいだけなんだ。一緒に遊んでくれなくたっていいから、お願い一人にしないで。そんな目で僕を見ないで。そんな怯えた顔しないで。そんな泣きそうな顔しないで。ねえ、ねえ、ねえ!
――助けて……助けてぇええええ!――
――うわぁああああああああ!!――
砂が我愛羅の意思とは無関係に動き出し、我愛羅に怯えて逃げ出そうとする子供たちの足を絡め取る。ずるずると引きずられた子供たちが地面に爪を突き立てるが、やわらかい砂は子供たちの掌の中をすり抜けていくばかりだった。
――もう一人は、いやだ……
ねえねえねえどうしたらこっちきてくれるのどうしたら僕と遊んでくれるのねえねえねえ。僕がどんな悪いことしたっていうのどんな悪いことしたっていうのなんで僕のこと怖がるの僕のせいじゃないのに違うのに。
ねえ一緒に遊びたいだけなんだよ。ボール受け取ってほしいだけなんだよ。どうしてそんなに嫌がるの?
ねえどうして?
――いやだぁああああああああ!!――
砂が一人の子供のほうに向かって飛んでいく。子供が泣き叫ぶ甲高い声がした。なんでそんなに嫌なの? ねえ一緒に遊ぼうよ。ボール受け取ってよ、ねえ。
そんな幼い子供の甘えるような声と。一尾の残虐な思いが混ぜ合わせられていく。
殺しちゃおう殺しちゃおう。そっちが断るからいけないんだ、そんな一尾の思いが。
砂が突如として目の前で弾けた。
――我愛羅さま、落ち着いてください!――
目の前に現れた彼――夜叉丸は、額や腕から血を流しながらこちらを見つめていた。真摯な、とても真摯な光に我愛羅は今自分がしようとしていたことを悟る。あのままでは自分はあの子供を殺してしまうところだった。
――やしゃまる……――
風が吹く。柔らかな面立ちの夜叉丸の髪が吹き散らされる。だって僕、ボールを返そうとしただけだもの。そんな声が喉元に絡まって、消えた。我愛羅はうつむいて、ただただ立ち尽くした。
+
「ふぅうううあああぁああああああ!!」
唾液が顎から滴り落ち、化け物と化した我愛羅は血眼になってサスケを探す。
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