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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第8話 六花が贈るメッセージ(後編)
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限り、死だけは逃げ切ることが出来ない。どれだけ技術が発展しようとも、ありえない、……あってはならないのよ」
 生きものは、死ぬことが出来てはじめて“生物”と言えるのだ。
「そして、それを突き付けられた、まだ“光”の方にいる私たちは、たとえどんな経緯があろうとも受け入れなくてはならないの。……それは、今回のことでも同じよ」
 そうしなければ、……抗い続ければ、耐えきることなど出来なくなるだろうから。今後、同じようなことは幾度となくあるのなら、なおさらに。
「だからこそあなたたちは今回の事には囚われずに、……出来るならご放念ください。そして、彼が生きていたという事実だけを、その優しいお心に刻み付けていただければ結構です」

 彼らからさらに何か言われる前に、逃げるように背を向けた。
 光のしずくが、黒く塗りつぶされた空に散りばめられている。街の中は、街灯や店からこぼれる光だけで彩られて、私に反し輝いていた。それらが、何故かとてつもなく痛い。早く、今日という日を終わらせてしまいたい。
 けれど、それでも、私の意志と足は、体を休めることではなく、フィールドの方へ向かっていた。途中、閉店間際のNPCの店へすべり込み、“それ”を一束買い求める。
 手に持った“それ”を見下ろしながら、口元に、いつもより無理やりに笑みを作った。
「……ばかだな、私」
 いっそのこと、あそこで彼らを糾弾して、罵って、わめいて、……締めにデュエルでも申し込んでしまえば、少しばかりでも楽だっただろうに。
 けれど、いつものように理性が邪魔をする。それは正しい行為ではないと理解しているのだから。
「ああ、もう、嫌になってしまう」
 つぶやいた声は暗闇に溶けて消える。私は、すでに闇が支配しているフィールドへ足を踏み入れた。



*   *   *



 広い草原に座り込みながら、星一つない黒い空を見上げた。もう私の隣に、彼が座ることはない。もうここで、彼と話す日は訪れない。
「……ねえ、ネージュ。今日は星が一つも見えないわ……」
 あなたと見た夜空は、とても綺麗だったのに。
「何とか言いなさいよ、ばか」
 私を勝手に守って、約束を破って、頼み事だけを残して消えるなんて、本当に馬鹿じゃないのか。
 ――――主街区に行きたいんだ。迷っちゃって、どうしようかって思ってたんだよ。
 思えば、ネージュとの出会いはとんでもないものだった。音ひとつしないこの草原で、彼に声を掛けられたのだ。
 今でも覚えている。彼の心底困ったような声と表情。私が街まで送ると言えば心底嬉しそうに顔を輝かせていた。
 いつも、いつも。最期のあの瞬間も、いつも照れたような笑みを浮かべてこう呼ぶのだ。

 ――――『キカちゃん』、と。

 彼に名前を呼ばれるのが好きだ
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