暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第8話 六花が贈るメッセージ(後編)
[7/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
 毒々しい黄色い光を纏った剣先が振り下ろされる様子を、ぽっかりと空いた思考で他人事のように見つめていた。
 その刹那に浮かぶのはネージュの太陽のような笑顔で、私は全てに遮断するために目を閉じた。
 ガキィィィンと、金属音が耳を劈く。
「……え?」
 だが、肝心の衝撃が全くこない。不思議に思い、ゆっくり、ゆっくりと瞼を上げる。
 息を、呑んだ。
「な……、エ、エギル?」
 斬撃を跳ね除ける逞しい背中。色黒の肌。それは間違いなく、数時間前までパーティーを組んでいたエギルだった。
「どうして、あなたがここに……」
 茫然としながら呟けば、背後から肩を叩かれた。パッと振り向けば、これまた私のパーティーだった屈強な男たちが居て。しかし、みな一様に、表情を歪めながら私を見ていた。
「……ルーク……?」
「…………キカはHP回復しろ、な?」
「ええ、……けれど」
「いいから!」
 乱暴に背を押され、モンスター達から遠ざけられる。温和な彼の思わぬ行動に目を見開くが、それ以上私は何も言葉に出来なかった。
「……こいつらは、俺たちがぶっ飛ばしてやるから」
 ルークが足を踏み鳴らしながら駆けていく。赤く染まっている己のHPゲージを、ぼんやりと見つめた。
「ネージュ……」
 彼が居たはずのそこへフラフラと近づき、彼が落としていった両手剣を胸に抱きこんだ。周りを見渡せばネージュが身に付けていたのか指輪も一つ落ちている。それも拾い上げて、ぎゅっと握りしめた。
「ネージュ……、ネージュ!!」
 何故だか、涙は零れなかった。



*   *   *



 外灯に照らし出される街並みは、どこか色褪せて見えた。いつもは煩く感じる人々の喧騒も遠く、上手く頭に入って来ない。
「……キカ、大丈夫か」
「ええ、平気よ」
 そう短く問いかけてきたエギルは、主街区まで帰ってくる間中、なぜか歯を噛み締めて私と目も合わせようともしない。いや、エギルだけではない。ルークも、その他のパーティーメンバーも、ずっとだ。このままでは流石に明日に響いてしまう。
 私はその場に立ち止まると、振り返った彼らへ向けて頭を下げた。
「さっきは助けていただき、ありがとうございます」
「いや、礼を言われるようなことは……」
 言いながら、だんだんと言葉が尻すぼみになっていく。いよいよわけがわからない。
 ……私は彼らに助けられ、今命があるのだ。
「どうして、みなさんがあそこに居たのですか?」
「あ、ああ。……実はあのエリア、正式サービス一か月経過を祝する “経験値大量獲得”っていうイベントの専用のところらしいんだ」
 なるほど、と頷く。確かに経験値の上がりが早いと、……ネージュと共に気にしていた。
「それで、このイベントに参加するには、現在ログイン中
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ