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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第8話 六花が贈るメッセージ(後編)
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れでは、精神的にもきついものがある。
左上のHPゲージをチラリと確認すれば、私の方はまだそれほど削られていない。だが、ネージュの方は6割を切っている。それを目の当たりにして、息が止まりそうになる感覚が襲い、喉の奥にしこりが出来たような錯覚を覚える。すると、ネージュが私の表情に気づいたのか、両手剣を横に振るいながら苦い笑顔を浮かべた。
「キカちゃんほど、上手に回避出来なくて」
「……ッ」
――――僕が死んだとき、渡してほしいものがある。
「……ふざけないでよ」
あの頼みごとが、現実になってしまうではないか。
「……え?」
戸惑ったような彼の声がかすかに聞こえた気がした。
けれど、そんなの関係ない。
守らなければ。ネージュを、守らなければ。
全身にグッと力を入れ、目の前で呻き声を上げるそいつらを睨みつける。視界の真ん中と右端にいるスケルトンが剣を振り上げたのと同時に、私も前へ踏み込んだ。
余裕もクソもない。ただがむしゃらに薙ぎ払っていく。視界はぼやけ、自分がどんな風に足を動かし、手を振るっているのかよく呑み込めない。それでも、目に付くかすんだ物体をかき消す。ひたすらに、腕を、足を動かす。
その間にも回避し切れなかった刃が掠めていき、自身から赤い欠片が吹き出す。だが、止めてはいけない。臆してはいけない。思考する時間など無い。本能で、脳が命令を出さなければ。
私が一匹でも多く倒し、彼へ回る敵を減らさなければ!
首を横へ倒し、すぐそばを突っ切っていくレイピアを避ける。振り下ろしていた私の剣がモンスターになんとか当たり、その姿を光へ変えることが出来た。息を切らせながらすぐさま視線を巡らせ、斜め後ろから突撃してこようとしていた棍棒を跳んで回避。崩しそうになるバランスを両脚で踏ん張って耐えた。だが視線が少し下へ落ちてしまったその一瞬に棍棒が追い打ちを掛けてきていた。どうにか躱すことは出来たが、先ほどよりも大きくバランスを失う。
「……くっ」
視界の外から肉薄してきた切っ先が私の身体を刺す。度重なる猛攻に、ついに左足が地面を捕え損ねた。その場に倒れ込む。脳を揺さぶる衝撃に顔を歪めた。
「キカちゃん!!」
「駄目よ!」
目を見開きながらこちらへ走り寄ろうとするネージュに、慌てて精一杯の声量で制止をかける。けれど、彼は止まってくれない。
「ネージュ、来ちゃ……っ」
いけない。
地へ手を付いて、立ち上がりかける。だが、次の瞬間には背中に鈍い衝撃が走っていた。大きな影が私に覆い被さっていて、驚きに目を瞬かせれば、吐息がかかりそうなほど近くにネージュの顔がある。
「……ネージュ?」
状況が飲み込めず思わず問いかけるが、――――しかしすぐに別の要素に息を詰まらせた。
――――鮮やかな、赤。
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