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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第7話 六花が贈るメッセージ(中編)
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て、儚く消えていくから。……あまりに眩しいから、疎ましく思えてしまうのだけれど、どうしても嫌いにはなれないの」

 地面に落ちて水となり、跡形もなく消える。それでも純白なそれは、心地よく心に残り、静かに手足を冷やしていくのだ。
「私は、絶対に白くはなれないから。……出来るなら、雪のように消えてしまえばいいと、思っているから。……だから、好きなの」

 ザアーと、雨音のように葉が音を立て、響いた。それが一層静けさを引き立て、世界から隔離されたような感覚を覚える。
「……僕も、“雪”は好きだよ」
 空の色を映す海も、色づいた葉も好きだけど、と、そう付け足した“青年”の声がやけに耳について、頭の中を反響する。しかし、それらは少しずつ染み込んでいき、すっとなじんだ。
「……これは、僕の“独り言”だから」
 それを聞き、私は口元に笑みを作って静かに頷いた。そして、今度は小鳥のさえずり耳を傾けるべく思考を取り払う。重ね合せていたその温度が、少し強張った気がした。
「……“君”になら言っても言いかなって思っているんだけどさ、このプレイヤーネーム、“ちょっとした事情”で本名なんだよね」
 一瞬、反射的に小鳥を蹴散らし、声を上げたい衝動に駆られた。けれども、ぐっと抑え込む。そして、鳥の唄に耳を傾け続けようと、バラバラになった糸を一つにまとめるため目をつぶる。数十秒ほど間が空いたあと、
「――――その“ちょっとした事情”関係で、キカちゃんに頼みたいことがあるんだ」
 意を決したような固い声音に瞼を持ち上げた。目の前には、“眠る前”と変わらない風景が広がっている。
「……あら、小鳥さん。もう“唄”は終わりなの?」
「うん、終わりだよ」

 彼の手がさっと離れた。途端に、容赦なく自分のものではない温度が消える。一瞬、何か穴が開いたような感覚が襲ったが、すぐに砂が風に吹き飛ばされるかのように掻き消えた。私は左手を、空いている手で握りながら尋ねる。
「それで、何をすればいいの」
「……さっき、待ち合わせでもしているのかって聞いたよね。あれ、あながち間違いとは言えないんだ」
 そこで、プツリと言葉が途切れた。不思議に思って彼の方を見れば、空色の二つの光が火影のように揺れていた。
冷たい風が、手足をなぞっていく。思わず身をすくめた時、彼の引き結ばれていた口元が解かれた。

「その人に、――――僕が死んだとき、渡してほしいものがある」

 ザワリ。氷が私の体を撫でつける。
 思ってもいなかったその頼み事のせいで咄嗟に理解力が追いつかず、声を上ずらせて半ば怒鳴り付けるように問いかけてしまった。
「……な、何を言っているの!?」
「何って……、そのまんまだよ。どういう意味かは、キカちゃんなら解るだろ?」
「いや、それは、……意味なんて私で
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