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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第7話 六花が贈るメッセージ(中編)
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 戦う術も経験もない彼のようなプレイヤーが、まだ他にもいるのなら。これは想像していたよりも大事かもしれない。
 チラリとネージュの方を見る。敵のHPゲージはもうすぐでレッドゾーンに入るが、やはりそこらのモンスターより強いらしい。私も行かなくては。
「いい? 回復が終わってもそこに居るのよ!」
 とりあえず安全の確保を。
 勢いよく立ち上がると地面を蹴り上げ、おどろおどろしい容姿を持つモンスターへとそのまま突っ込む。
「ネージュ!」
 さっと斜め後ろへ跳び退ったネージュと入れ替わるように前へ出て、刃を叩きこむ。黄色いエフェクトが迸った。間を置かずに金色が再び前に飛び込んで、銀色が振り上げられる。瞬間、敵のHPはゼロを刻み、青い欠片をまき散らした。
「良かった。ひとまず、これで…………」
「き、キカちゃん! 後ろ!」
 反射的に後ろを振り返った。目を見開きながら顔を青ざめさせる男と目が合って、それから。……それから、その男の、後ろに、今と全く同じ……。
「に、逃げなさい!」
 ネージュの手を振り払って駆けた。けれど、包帯だらけのそいつが持つ片手剣が、男の頭上に振り下ろされる――――。
「そんな……っ」
「……し、死にたくな」
 パリン。
 今聞いたばかりの残酷なその音が、私の耳にしっかりと届いた。つい数十秒前に見た光景と全く同じものが、私の目へと刻み付けられてしまった。
「……そ、んな……」
「危ない!!」
 私へと繰り出された斬撃。それは滑り込んできた青年によって弾かれる。
 彼だけに戦わせるわけにはいけない。一緒に、剣を、振るわなければ。
「……わたしの、せい?」
 私は、あの男のそばから離れるべきでは無かったのに。せめて私が近くにいたのなら、もしかしたら彼は生きていたかもしれないのに。
「切り替えるんだ!」
「…………ッ」
 急激に重くなったような気がする曲刀を握り直す。喉が痛い。頭の中が揺れる。それでも、やらなければ。
 いつの間にか空いてしまった彼らとの距離を埋めようと足を踏み出す。しかし、背後からまた違う声が聞こえ、ビクンと肩が跳ねた。後ろで口を開ける分かれ道を肩越しに見れば、包帯のモンスターとはまた違う敵に追われながらこちらへ走ってくる少女が目に飛び込んでくる。
「やだぁ……ッ、やめて!! 来ないでよ!!」
「……ごめん、ネージュ」
 ごめんなさい。
「え、キカちゃ……」
 助けなければ。今度こそ。
「いやだ、やだ、やだ……ッ! おとうさん、おかあさん!!」
 私なんかよりよっぽど求められているその光を、奪わせるわけには。
 無茶苦茶に短剣を振り回すその子へ向けて、敏捷値の限りに疾走する。けれども、もう少しで手が届く、というところで。
「きゃあぁっ」
「っ!!」
 ショー
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