暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第6話 六花が贈るメッセージ(前編)
[5/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ことが出来なかった。包容力のあるその雰囲気に、腹の底から真っ黒でねっとりとしたタールのような苛立ちが湧き上がる。知らず知らずのうちに拳を固く握りしめていて、ふるふると震えていた。
「……ヒトなら、恐ろしいものには触れたくない、理解出来ない存在には近づきたくない――――そう考えるのが普通ではないかしら」
 つい剣を含む声音が己の口から飛び出す。しかし取り繕うことはせず、ギッと鋭く目を細めた。
「は? ……おい、何を……」
「だって、そうでしょう? かなり拡大解釈すれば、幽霊や怪奇現象の類かしら。誰だって、そんなものには関わりたくないって思うのが当然の心理でしょう?」
「お、おいおい。自分を幽霊とかと同じ部類にするなよ……」
「“私”には、それが一番適している表現だと思うのだけれど。……違うかしら?」
 私は、世界から逸脱した存在だ。そんなもの、“幽霊”だと、“化け物”だと表現しても、間違ってはいないだろう。
 私の考えは、通常の人たちからすれば、吐き気すら覚えるものなのだろう。だが、そんなものを気にして、改める気など毛頭ない。しかし、周りはそうはいかないのだ。気にしないことなど、出来ないはずはなのだ。
 足並みを乱す存在は排除する。調和を壊す存在は弾き出す。異物が混じれば取り除く。不穏なものとは距離を置く。理解出来ない、受け止められない存在は拒絶する。相容れないと感じれば繋がりを断つ――――。
 それらは、身を守るための当然の行動。もはや脊髄反射と言っても過言ではない。どんなに恐れ知らずな人間でも、本当に“恐ろしいもの”を見たり経験したりすれば、咄嗟に自身の体を守ろうとする。それと一緒なのだ。
 合っているとか、間違っているとか、そういう次元ではないのだ。それが“当たり前”なのだ。それが“世界”なのだ。
 私たちが生きている、世界なのだ。

 私は少し小首を傾げながら、色黒の顔を見上げた。ずいぶん彼らを困らせてしまったらしい。昨日と同じ様に、難しい顔をして固まっている。
 ……これだから、私はいけないのだ。和を壊すことしか出来ない自分に、苛立ちの矛先が向かう。
 睨んでいた目を伏せると、エギルたちへ向けて頭を下げた。
「……ごめんなさい、少し言いすぎたわ」
「い、いや、そんな謝らなくても!」
「いいえ、私が悪いの。ごめんなさい」
 彼らはきっと、とても懐が深いのだろう。それだけなのだ。……それだけ、なのだ。
「キカ……」
「だから、と言ったらおかしいかもしれないけれど……。ご迷惑をおかけしたお詫びに、一つ、間違いを訂正して差し上げます」
 エギルから、半歩離れる。そして、目を丸くしている彼らに背を向けてから、肩越しに口を開いて、少しいたずらっぽい笑みを作った。
「私、結構嘘吐きよ?」
 そう、私を利用するくらい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ