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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第6話 六花が贈るメッセージ(前編)
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己の目に曇りなく映る五人を、私は知っている。昨日、私が勝手に険悪な雰囲気を作り出し、勝手に背を向けて立ち去ったから者たちで間違いない。
 私は、どうすることもなくその場にただ突っ立っていた。何度が道歩く人とぶつかり体が揺れるが、そちらの方に気が向かない。
 何故、あそこに彼らがいるのだろう。今まで出会って来た人々に、あのような人たちはいなかった。普通の思考回路を持つ人が行動するならば、私のことを遠ざけるのが道理のはずなのに。
 胸の内に、モヤモヤとした形を持たない、けれどしっかりと突き刺してくる不安が溢れだした。正直言って怖い。この先へ行きたくない。
 あまりに予想外の光景のせいで、私の足裏は完全に地面と一緒に固定されてしまった。
 だが、いつまでこうしてはいられない。私はひとつ息を吐いて、足を地面から引っ剥がす。
 一歩、一歩、ゆっくりと近づいていく。足を踏み出す度に、ドクン、と大きな胸の鼓動を感じた。
 いつでも逃げられるように。どんな暴力を振るわれても、耐えられるように。ソロリソロリと、警戒しながら近づいていく。
 すると、そんな私に気が付いたのか、目の前の五人の内の1人がこちらを指差した。
 自分の肩が自然と跳ねたのが分かった。足が逃走する道を探して動き出そうとするが、なんとか押さえつける。体が鉛と一体になったようだ。ひどく重い。
 何て言われるのだろう。どんな表情をされるのだろう。蔑まれたり嫌悪されたりするのは慣れているとはいえ、自らそこへ向かうのは気が引けた。
「……おはようございます」
 なるべく目を合わせないように、顔を俯けながら朝の挨拶を口にした。きっと、とても小さくて聞き取りづらいだろう。それほど自分が緊張していると思い知らされて、けれどどうすることも出来ずに身構える。降り注ぐだろう刃から己を守れるようシールドを張る。
 しかしそれは、考えもしていなかった方向からぶっ壊された。

「おう、キカ! 待ってたぜ!」
「おはよう、キカ」
「やーっと来たか、遅いんだよ!」
「どうした、腹でも壊したかー!?」
「ばぁか、ンなわけねーだろ」
「はは、そりゃそうだ!」
 私を迎えたのは、罵倒でも、責め立てる言葉でも、ましてや距離を置くような言葉でもなく。朝の挨拶に相応しいと言えるような、日常会話そのもので。
「ど……して」
 またしても予想外の出来事に、目を丸くすることしか出来ない。思考が停止する。
 これは、どういうことだ。何故私は、こんなにも明るく、まるで当たり前だとでも言わんばかりに受け入れられているのだ。
 なんで、なんで――――。
「なんで、……ここに来られたのですか?」
 あの会話内容では、私を気味悪がってもおかしくはない。誰も彼らを責めることは出来ないはずだ。
 だから、彼らは今日、
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