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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第6話 六花が贈るメッセージ(前編)
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、それでも私は笑顔を作る。笑え、笑え。完璧に笑え。
ふいに、ネージュの顔が柔らかくなった。あ、と思った時には、
「そうなんだよー! いやー、ホント困っちゃってね!」
カラカラと明るい笑い声を上げ、さっきまでの神妙な表情が嘘だったかのように白い歯を見せて笑う。私の頬に触れていた手を片方頭の後ろへ持っていき、ポリポリと掻いていた。
そんな彼の優しさに、針で突かれたような痛みが胸に広がる。しかし、無駄にしてはいけない。言いたいことを飲み込んでくれたネージュに、私も返さなければ。
心底呆れた、という顔と口調をすぐさま作った。
「もう、そんなことだろうと思ったわ」
「え、バレてた?」
「当たり前じゃない。分かりやす過ぎよ」
「あっちゃー、……じゃあ、キカちゃんに助けてもらおうかなー」
「しょうがないわね。良いわよ」
――――本当に助けてもらったのは、私のほうのくせに。
ゾワリと悪寒の伴う囁きが耳朶を撫でる。つい強張りそうになった表情を笑顔に保ち、
「で、どこに行きたかったのかしら」
「ええっとね……」
ネージュの隣に立ち、夕日に背を向けて歩き出した。すると、スッと彼の手が伸びてきて、私の右手が包まれる。反射的に横を見れば、子どもが悪戯に成功した時のように表情を輝かせる金髪の青年がいて。
「ちょっと、何を……」
「こうやって手を繋いだ方が安心するでしょ?」
「あ、安心って!」
「ほら、れっつごー!!」
レッツゴーって、案内するのは私なのですが。
出かかった言葉を呑みこみ、代わりに小さく笑った。ザワザワと身体を這っていた冷たい感覚は、吹っ飛んでしまったので。
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翌日。私の足は、昨日約束した広場に向かっていた。
しかし、ハッキリ言って来ていないだろうと思う。あれだけ異質な思考に困惑していたのだ。昨日の今日で普通の対応が出来るとは思えなかった。
これは、もしかしたら明日のボス戦は休むことになるかもしれない。その場合実質ドタキャンしたということになるだろうが、私の存在が隊の――――正確にはある特定のパーティーの連携を崩す恐れがあるというのなら、致し方が無いのではないだろうか。幸い、ボス戦参加希望者の名簿を作っている様子は無かった。おそらく私一人が欠けたところで、気付く者はあの五人だけだろう。
――――と、そんな事を考えながら歩みを進めていた私の足が、広場の端が見えたところで自動停止する。
「うそでしょう……?」
自分の唇から、か細い声がこぼれた。視界に映るのは、屈強な五人の男たち。その雰囲気は和やかで、刺すようなものは何一つない。見知らない人たちならば、気にせず隣を通り過ぎて行っただろう。
……そう、知らない人であったならば。
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