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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第6話 六花が贈るメッセージ(前編)
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背後から掛けられた声に、パッと振り返った。
夕日の輝きに負けず劣らずの金色の髪。そこだけ青空が広がっているような、鮮やかな色をした瞳。カーソルには、【Neige】と表示されている。その5文字の名前と、相変わらずの雰囲気にほっとし、胸を撫で下ろした。
あれほど気持ち悪さぐるぐると渦巻き、視界は黒く染まっていたというのに、彼の柔らかな声音を聞いた瞬間、すーっと嫌な感覚は消えていく。
「ああ……、ネージュ」
「キカちゃん……、どうしたの? 何か顔色悪いよ、大丈夫?」
「……平気よ、何でもないわ」
彼は表情を暗くすると、私との距離を詰めてくる。大きな手が顔に伸ばされ、ふわりと包まれた。
……あたたかい。
私は詰まっていた息を吐き出し、ネージュを安心させるために笑う。
「本当よ。……本当に、大丈夫だから」
「キカちゃんの“大丈夫”は、信用出来ない」
「全く、心配性なんだから……。信じてちょうだい」
「無理」
ムッとしたような顔のまま、バッサリ切られてしまった。迷う素振りもなくすぐさま返されてしまったので、返事に窮する。蒼穹の2つの瞳があまりにじっと私を覗き込んでくるので、思わずさっと目をそらして逃げた。
話題を、早く変えないと。空回りする思考を内心で叱咤した。
「あ、あなたこそ、どうしたの?」
「へ? あ、ああ、うん。キカちゃんの姿をみつけたから……」
「そうじゃなくて……、あなた、私に用があって声をかけたんでしょう?」
「ま、まあ、……そう、なんだけど」
歯切れの悪い答えに、チラリとネージュの顔を窺う。彼は眉を顰めて、思案するような顔つきをしていた。正直、彼にそんな表情は似合わない。
大方、出会った時の私の様子から気遣ってくれているのだろう。咄嗟に失敗した、と思った。
見せるべきではなかった。誰の目があるか分からない外で、出すべきではなかった。失敗、してしまった。いくら動揺したとはいえ、直前のエギルたちとの会話で思考が通常運転ではなかったとはいえ、平静を装っているべきだった。そのまま、何食わぬ顔をして今夜泊まる宿を探して、早々に寝てしまえば良かったのに……。
「ネージュ?」
「……あ、ごめん」
明らかに上の空な口調で、私も苦笑してしまう。
「……あなた、まさか、街の中で迷ったの?」
ぴくり、ネージュの肩が揺れた。蒼の目が真ん丸になり、こちらを捕える。眉はさらに八の字になり、ぎゅっと口が引き結ばれた。
それはそうだろう。完全に話題を変えに掛かっているのだ。いくらふんわりとした性格のネージュとはいえ、それくらい分かっている。現に彼は、どうするべきなのか困って、押し黙ってしまったのだから。あんなにお喋り好きな彼が、口を開かないのだから。
ごめんね、ネージュ。
心の中で謝罪を言いながら
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