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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第5話 君の瞳、僕の瞳(後編)
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で」
「逃げて……なんて、いないわ」
「だったら、僕の話を聞いて」
お願い。と、懇願するような声音が重ねられる。チラリと横目でネージュの表情を確認すると、いやに真剣な顔をしていた。何だか悪いことをしている気分になり、私は身体の向きを直すと、真正面から彼の瞳を見据える。すると彼は安堵したかのように肩を撫で下ろして頬をほころばせた。
「……ねえ、キカちゃん?」
「何よ」
「もしかしなくてもさ、僕が来るのを待っていてくれたの?」
笑いを噛み殺す様を隠しもせずに、ネージュが楽しげに問うてくる。そのストレートな質問に私はすぐさま顔を背けた。青空を溶かした目で見ないで。
「そ……、そんなことあるはずないでしょう。ちょっと星を見に来ただけよ」
「星って、……もうずいぶん前に雲で隠れちゃってるよ?」
確かに、寝てしまう前はあんなに光り輝いていたのに、今は厚い雲で覆われていた。明らかに天体観測をする天気ではない。
「……夜風に当たりたかったのよ」
「そんな薄着で、ブランケットまで被って?」
眉を八の字にして、ネージュが腕を伸ばしてくる。避ける間もなく、彼の手が私の頬に添えられた。
「……冷たいね」
「大丈夫よ。いくら冷えたって、何も問題は無いわ」
「そんなことない。問題ならあるよ」
「……どんな?」
「へ?」
「どんな問題が、あるっていうの」
つい険のある口調になった。ネージュはそれを気にする様子はなかったが、浮かない表情で私を見てくる。私は訝しみ、首を傾げた。
「ネージュ?」
「……待たせちゃって、ごめんね」
「は? ……だって、これは」
「君のことを、あたためたいのに。逆に冷やしてしまった」
「……ッ」
慈愛に満ちた蒼穹を向けられ、息を呑んだ。なんで、一体どうして、そんな目をして私を見ているの。
戸惑いとともに溢れる疑問。しかし先ほどのように、この両足は、……私の意志は、逃げることをしなかった。
ネージュの手が、優しげな手つきで私を撫でてきた。頬に温もりがじんわりと浸透してくる。あまりに心地が良くて、そのあたたかさを甘受する。
「もう1時を過ぎているじゃないか。こんな時間まで僕を待っていたなんて、不用心過ぎるよ。てっきり僕は、もう寝てしまっていると思っていたのに」
私が放った言葉と同じようなことを言うと、撫でつけてきていた大きな手が私からブランケットの端を奪った。ぐっと力を込められ引き寄せられる。私は特に抵抗はせずに、数歩分ネージュとの距離を詰める。さらに近くなった彼の顔を見上げ、そして怪訝に思いながら問いかけた。
「ねえ、ネージュ」
「ん?」
「……私がこの草原にもう居ないと思っていたなら、どうしてわざわざ来たの?」
モンスターが湧かないこのエリアは良い。しかし、何故危険を冒してまで
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