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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第5話 君の瞳、僕の瞳(後編)
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のだから蔑ろにするなんて出来ない。仕方がない、ただそれだけの理由で付き合っていた。大丈夫、大丈夫。ネージュにだって乗り気でないことはある。疲れて、今日はこの草原には寄らず真っ直ぐ拠点へ帰ったのだ。
だから、だから、だから――――。
ぐわんぐわんと揺れ、黒く染まる思考を無視した。送信出来ないメッセージなんて知らぬ存ぜぬを押し通し、意識の外へ投げ捨てる。言葉を並べて不快感の払拭を試みた。
けれど、消えない。それどころか嫌な感覚は増すばかりで。
こんなこと、今までなかった。しつこいくらい、私に付きまとっていたのに。
ギリと唇を噛んだ。“向こうの世界”だったら、確実に血が滲んでいるはずだ。痛みがチラリとも襲わないことにさえ、苛立ちを覚えてしまう。固く目をつぶり、自身の服を握りしめる。
ブルリと身体が震えた。おそらく寒さのせいだ。いつもの場所に腰を下ろし、ストレージからブランケットを引っ張り出して首まですっぽり埋まる。薄水色の毛布を、あらん限りの力で握りしめた。
どれくらい経ったのだろう。いつの間にか浅い眠りに入っていた私は、草を踏む音で勢いよく振り返った。
そこには、息を切らせた青年が立っていて。目を見開いて、私をしっかりと視界に入れていて。見慣れたその柔らかい金髪に、ぐっと喉を詰まらせる。
「き、キカちゃん、どうして――――」
「ネージュ!」
ブランケットを翻して彼に詰め寄った。凝然と立ち尽くすネージュを睨み上げ、早口で捲し立てる。
「あなた、いつも勝手に来るくせにこれはどういうことよ! 一体どこに行っていたの!」
私は、何に怒っているんだ。彼はただの、よく話すプレイヤーではないか。
頭の片隅で嘲笑する声が聞こえる。しかしそれを跳ね除け、彼へと言葉を投げつけた。
「ちょっ、ちょっと待って、キカちゃ……っ」
「だいたい、今何時だと思っているの。どうしてこんな夜中に、フィールドを歩き回って……!」
「待って、落ち着いてキカちゃん!」
「私は至って冷静よ! それなのにあなたは、ネージュは……」
「……ッ」
「…………私が……っ」
ああ、止めろ。これ以上は、口に出してはいけない。
そんな必死の叫びは、空しく消え去る。
「私が、どれだけ心配したと思って――――」
「え……?」
ネージュの口がポカンと開かれる。漏れ出た驚きの声に、私はバッと後ろへ下がって距離を取った。
細かく震える手で、口元を押さえる。さーっと、血の気が引いていく感覚がした。慌てて体ごと彼から背け、逃げの体勢になる。そのまま片足を後ろへ引き、
「……ごめんなさい、忘れて」
「キカちゃん!」
逃亡を図ろうとした私は、しかしネージュに肩を掴まれたことによって阻止された。
「待って、待ってよ、キカちゃん。逃げない
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