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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第5話 君の瞳、僕の瞳(後編)
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済ませると、こちらを振り向いた時には、その手の中には一つの花束が収まっていた。
「はい、どうぞ。付き合ってくれたお礼」
「あ、ありがとう……」
差し出された小ぶりの花束を、おずおずと受け取る。発表会だとか表彰式だとかで、数えきれないくらい花束は貰ったことがあるのに、彼から受け取る花はどうしてだかものすごく緊張した。視界が埋まるくらい大きくて立派な花束よりも、ネージュから手渡されるそれの方が格段に嬉しくて、私の胸を強く揺さぶる。
「……綺麗」
「喜んでくれたみたいで、良かった」
やわらかい香りに、私は笑んだ。
「これは……、スイートピーかしら」
「正解、分かるんだ」
「そりゃあ、まあ……。それにしても、本当に季節感がおかしいのね」
肩をすくめて言う。それに対して彼は苦笑いを返してくると思ったのだが……、予想に反して笑い声は聞こえなかった。私は首を傾げ、目を瞬かせながらネージュの両目を覗き込む。途端、きゅっと体が引き締まった。
視線が固定されたかのように外せない。それほど、清廉で濁りの無い碧い宝石が、私を一直線に射抜いていた。生唾を飲み込む。
「ネージュ?」
「……ねえ、キカちゃん。スイートピーの花言葉って知ってる?」
「は、花言葉? ……ええと、確か」
突然に振りに、私は慌てて脳内の膨大なデータをひっくり返す。女の子らしさがほしいと嘆いたスグとともに、花について勉強していた時期があるのだ。
思考時間は数秒。いくつかある花言葉からそれっぽい答えを弾きだした私は、若干戸惑いながら彼の瞳を見つめ返す。
「スイートピーの、花言葉は」
『ほのかな喜び』。
私がそう口にすると、ネージュが一層優しげに相好を崩した。
*
その日からネージュは、私が拠点とする村へ毎日のように訪れるようになった。
私は何をするというわけでもなく、笑いながら、時には冗談を交えながら楽しげに話す彼の話を、ただ聞くだけ。けれどそれもまあ悪くない時間で、ネージュと出会ってニ週間が経つ頃には、あの草原で自然と待ち合わせるようになっていた。
今日も私が迷宮区から戻って来ると、あの清純な黄金色が目に入る。内心その姿にホッとしつつ、歩く速度を速めて彼に近づいた。
「あなたも飽きないわね」
「あはは、……こんばんは」
「こんばんは、ネージュ」
あなたはきっと知らない。一週間と少し前までは、村に戻って来る時間なんて一定ではなかった。むしろ、迷宮区に籠ることなどあたり前だったというのに……。
今はこのささやかなこの時間が、ほんの少し、本当に少しだけ、多分血球ひとつ分くらいだけ楽しみなのだ。口が裂けても言ってやらないけれど。
「よくこんな所に何度も来られるわね。何もないじゃない」
「何も無いなん
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