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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第4話 君の瞳、僕の瞳(前編)
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を冒してまで私に話しかけず、攻略帰りのパーティーに混じるべきだったのだ。あの森は深いといってもさほど入り組んではおらず、舗装だってされている。来た道を戻ろうと思えば、簡単に出来るだろう。
まあこれは、顔に出てはいなくとも相当切羽詰まっていたのだ、と言われればおしまいなのだが。
私は若干の疑いを滲ませて彼をみやる。一見人は良さそうだが、まだ完全には信用していない。人間、いくらでも欺くことが出来るのだ。それはもう、冷徹に、残酷に、無情に。誰かを貶めよう、と思っているのならば。
「……僕は別に、深い意味があったわけじゃない。ただ、声を掛けられなかっただけで……」
「なおさら分からないわ。こんな私よりも、フィールドで会った人たちの方が話しかけやすかったはずでしょう?」
「え、なんで?」
「……は?」
本気な声音で疑問の声が返ってきて、つい声が裏返る。けれどもそれには構わず、ネージュはコテンと首を傾げながら続けた。
「どうして自分以外の人の方が話しかけやすいって思うの?」
「そ、そんなの簡単じゃない。何を考えていて、どんな行動に出てくるかは後ろ姿だけでは分からないんだもの。すぐに引き返して、他のプレイヤーに助けを求めた方が賢明だったと思うわ」
「……僕には、君が優しそうに見えたけれど」
「何を根拠にそんな事が言えるの」
少しムッとしながら問えば、しかし彼は気にも留めずにカラカラと笑う。そして目を細めて穏やかに微笑むと、
「実際優しかったじゃないか」
澄んだ、混じり気のない声音でそう言われ、言葉に詰まる。私とネージュの髪を、風がサワサワと撫でていった。
「……優しくなんか、ないわ」
そう。私は優しくなんてない。冷酷で無慈悲な、血の通わない狂ったバケモノで。
「優しいよ。キカちゃんは、凄く優しい」
「どこがよ」
「どこって……、今のこの状況そのものでしょ。わざわざ、こんな風に街まで送る必要は無いんじゃないかな」
「……それは、あなたに死なれたら――――」
「ほら」
私の左手が、大きな手に包まれた。
「さっき知り合ったばかりの胡散臭い男の事まで、そうやって心配してくれる」
「……本人が胡散臭いって言わないでちょうだい。自分の行動を疑いたくなるわ」
「あはは、それはごめんね。でも、事実でしょ」
その軽い物言いに、私は顔を顰めてネージュの顔を見上げる。涼しげなその表情には、やはりと言うか、悪意のようなものは感じ取れない。人を貶めようとする雰囲気だとか、嘲る顔だとか。そういう負のものは、全く。少しも。
変わった男だ、この人は。本当に。
「……というか、私の事“キカちゃん”なんて呼ばないでくださる?」
「えー、いいじゃん」
「嫌よ」
「何で?」
「そ、そんなのどうだっていいでしょう。嫌なものは嫌な
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