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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第4話 君の瞳、僕の瞳(前編)
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人きり。人の声も、モンスターの咆哮も、何も聞こえない。雑音の無いしっとりとした空間。ただひたすらに、風と、葉っぱと、鳥たちの声だけが、鼓膜を優しく震わせた。私は両目を閉じ、微かな音に耳を傾ける。
ひどく落ち着く、自然の歌声だ。
思わず口元がほころぶ。そして、私はさらに深く浸ろうと――――、
「ねえ」
ヒュウ、という風の音に混じって私に降りかかった声。聞こえるはずのない、男の声。ビクリと体が大きく跳ね上がった。しかしすぐさまバッと体を起し、反転しながら外壁側へ飛ぶ。突然のことでバランスを崩したが、無理やり着地し剣の柄に手を添えた。腰を落とし、何があっても対応出来る体勢になる。確かにここはモンスターが湧かないエリアだが、HPが減らない圏内ではないのだ。
「あっ、ご、ごめん! ごめんなさい!」
たった数秒。私の行動に呆気に取られた様子の目の前の男だったが、私が敵意を露わにしている事に気付くと、慌てたように謝罪を口にした。存外物腰の柔らかそうな彼に少しだけ警戒心を解くが、それでも男の目を見据えながら語気を強めて尋ねる。
「……こんなところで、一体何をしているのかしら」
「別に、キミに何かしようってわけじゃないんだけれど……」
苦笑を浮かべながら両手を上げ、危害を加える意思はないと主張している男。
年齢は、おそらく17、18歳くらいだろう。日本人離れした整った顔と、青空を溶かしたような2つの瞳。夕日に輝かく金色の髪は、頭の後ろで一つに結び背中に流していた。
私は柔和な表情でこちらを真剣に見つめてくる彼を見上げながら、息を深く吐き出して柄から手を離した。
「――――ごめんなさい。少し、ピリピリしていたみたいだわ」
そう言いながら肩の力を抜くと、目の前の人物もホッとしたような顔になった。手を下ろすと、私に数歩近づいてくる。
「気にしないよ。急に声を掛けた僕が悪いんだから」
「……それで、何の用? ここら一帯は何もないわよ」
「あーうん、ちょっと言いにくいんだけど」
口ごもる青年に、私は首を傾げた。見ず知らずの私に一体何を言おうというのか。再び警戒心が首をもたげる。眉を少しひそめた私にまた何か感じ取ったのか、今度は幾分か早口で、
「いや、ちょっと道を聞きたいんだよ」
「道?」
訝しみながら見つめ返すと、青年が困ったように眉を下げる。私は咄嗟に目をそらし、ひとつ咳払いをした。
「それで、どこに行きたいのかしら」
「主街区」
「……は?」
全く予想もしていなかった答えに、思わず素っ頓狂な声が出た。絶句し、瞠目する。
「だから、主街区に行きたいんだ。迷っちゃって、どうしようかって思ってたんだよ」
「ちょっと待ちなさい。小さい村ならまだしも、主街区なんて――――」
マップを見れば済むことだ
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