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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第4話 君の瞳、僕の瞳(前編)
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休ませるというよりも、脳の処理を休ませるという意味合いの方が正しいはずだ。分かりきっていることだが、実際の身体は全く動いていなくても、脳は活発に動いている。このアバターを動かしているのは、あちらの世界で眠り続けているであろう私の脳。当然のことだ。そうでなければ、今目の前に映っている映像は“誰の”ものなのかという話になってくる。
 ゆえに、疲れなどによって感じるこの世界での頭痛やめまい等の症状は、“向こうの世界にある”自身の身体が受けるべきものを、この現実世界で感じている――――ということなのだろう。“ゲーム”内での痛覚は消せるだろうが、自身の脳が発しているのならば抑えられないのは仕方がない事。
 つまるところ、SAO内での頭痛等は、あちらの世界にある身体の悲鳴ではないか、ということ。あくまで私の推測に過ぎないけれど。
 ただまあ、それがどうしたという話にもなるのだが。
 所詮は痛みだ。集中力や判断力の低下が悩ましいところだが、それは経験と己の能力でカバーしよう。
 本来の限界とは、“意識を失うまで”なのだから。
 私は、少しの無駄も出したくない。ギリギリまで切り詰めるのだ。余計なことを考える暇を自身に与えないように。

 全身を包む倦怠感を振り払って立ち上がる。立てつけの悪い戸を開けば、空は真っ赤に染まっていた。目を突き刺すような光と、胸を逆撫でしてくる景色。もう一度ため息を零した。
 血の色みたいだ。
 赤い、赤い血。毒々しい、赤と黒の絵の具を混ぜて垂れ流したような色。今にも、ドロリと地面へ滴り落ちてきそうだ。
「……気味悪いわね」
 二の腕をさすり、ポツリとつぶやく。戸を静かに閉め、村の外へ歩き出した。
 この村は、全方位を低い木の柵で囲まれている。しかも、村を切り離すように鎮座する森からこちら側は、モンスターが全く湧かない地帯だ。モンスターからも見放されて少し笑ってしまうが、こんな場所にずっといれば流石の私でも息が詰まるというもの。敵がいない事を良いことに、私はよく草の上に座り空を眺めているのだ。この荒廃した村はどこからどう見ても異質で、ただならぬ雰囲気を放っている。しかし、モンスターのいないフィールドは平和で長閑だった。唯一好きなポイントと言えるだろう。
 ぼうっと周りを眺めながら、草が全く生えず土がむき出しになっている道を踏みしめる。冷たい風が、静かに肌を滑っていった。その流れに、自身の体をまかせる。
 やがて土の道が草へと変わり、村の外へ出たことを伝えてきた。私は適当に歩き、風で踊る白いワンピースの裾を手で押さえながら、腰を下ろした。ここからずっと向こうに崩れた石の外壁も見え、そこから先は存在していないことが分かる。そのおかげで目の前の景色を遮るものはなく、赤い空だけが広がっていた。
 広い、広い草原に、ポツンと一
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