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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第3話 狂っているモノは何?
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るそれだけに、突き動かされた。
 体を無理やりに方向転換する。その際、真後ろにいた男に体がぶつかった。咎めるような刺す視線をちょうだいするが、そんなもの構わない。
 人垣を抜けた。
 それでも走る。ただひたすらに、走る。
 後ろは振りかえられない。もう大丈夫だと思っていても、体はそれを呑み込んではくれない。
 背中に、何かがぴったりと張り付いているから。
「……っ!」
 嫌だ。
 嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ――――……。
 ぐるぐると渦巻く言葉。どろどろに溶けて、もう何の色だったかはわからない程どす黒くなって、底へ底へと沈んでいく。
 奈落にいくら積み重なっても、あふれることはない。だが、同時に、苦しさも吹き出すことはなく、体の中を掻き乱す。
 ……あぁ、それでも。
 あの誓いを守るためには、仕方がないことなのだ。これは、自らへの戒めだから。
 肉に食い込み、赤黒い血液が流れ出続けるように手足につけた枷なのだから。
「は、……あ、うっ、ぁ、……っ」
 自分の吐き出す乱れた息が、やけに大きく頭の中に響いていた。







 ここはどこだろう。

 靄がかかっていた意識がはっきりした時、真っ先にそう思った。
 どうやら、闇雲に走っていた所為で、知らない路地裏へ入り込んでしまったようだ。けれど、人々のざわめきは遠くに聞こえているので、少し歩けば主街道に出られるだろう。
 鼓動を収めながらそう結論付け、マップを開こうと右手を縦に振ったとき――――、
「ねえ、ちょっと。大丈夫?」
 背後から響いた男の声にビクリと肩がはねる。けれど、耳に馴染んだその優しい声音に、不覚にも何かが溢れそうになった。
 緩慢な動作で後ろを振り返り、神々しく輝く夕日のせいで逆光となっている人影を見詰めながら、零すまいと必死に“私”を押さえつけた。

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