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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第3話 狂っているモノは何?
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わけではなく――――」
 あっ。
 声にならない声が出た。そこまで言って、慌てて口をつぐむ。つい反射的に否定の言葉を口に出してしまったが、なぜ「はいそうです」なんて言って肯定しなかったのだろう。そうすれば、たったの6文字で済んだことなのに。
 内心舌打ちしながら彼らを見れば、予想通りというかなんというか、ますます釈然としないとでも言いたげな表情を浮かべていた。
 ……別にいいか。
 恐れられるのは、疎まれるのは、もう慣れてしまっているのだから。
 “私”が理解されないということは、すでに分かり切っているのだから。
「……私、こちらの世界の食べ物は口にしたことが無いの」
 なるべく刺激をしないよう、出来る限り遠回しにそれを伝える。予想通りというかなんというか、数秒後に彼らの雰囲気が一気に硬くなった。おそらく、裏に隠した意味にすぐ気づいたのだろう。
 見開かれた10の瞳が、私をつんざく。けれども、血は一滴も流れ出すことはない。こんなことで、今更私は傷つかないのだから。
「……なんで、そんなこと……」
 体感時間にして数秒。だが、おそらく実際は1分弱。
 風の音にでもさらわれそうな、問うというよりも己の疑問をそのまま呟いたと形容した方が正しいだろう、わずかな声が絞り出された。私の耳はそれをしっかりと拾い上げる。
 驚きに揺れている目を射止め、おもむろに口を開いた。
「向こうの世界での“食事”という行為は、生命維持のためだけだった。……それ以上でも、それ以下でもなかったの」
 ……私は、“生かされて”いた。
 そう、例えるなら、墓場から無理やり掘り起こされて、“生”を与えられた化け物のように。
 作られたハリボテの体に“命”が植えつけられた、ただの物体のように。
 私にとって“食べる”という行動は、“人工物”が壊れないように、また維持するためのもの、という認識だった。
 ゆえに、“楽しさ”なんてものは微塵も存在していなかった。
「それに、この世界で生死を決めるのは、すべて“数字”。……たとえば、レベル、HP、筋力値、敏捷値……、ね? 全部数字でしょう?」
 考えればすぐ分かることのはずだ。この世界での食事とは、ただ欲求を満たすためだけのものであり、生命に直接関わるものではない。戦況を左右するのは、ステータスと、己の勘と、スキルと、意志と、仲間と――――。他にも要素は色々あるだろうが、“食べる”という行動そのものに意味があるとは思えない。
 まあ唯一関係がありそうなのは、エギルが持ち出してきた“友好関係”だろうが……。そんなものどうとでもなる。そもそも私は、いわゆる“信頼”なんて、そんな薄っぺらく、軽い言葉に重点を置いていないのだ。
「この世界で何かを食べても、何かしらの効果が付いていない限り、これらの数字に何も影響を示さ
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