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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第3話 狂っているモノは何?
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のに邪魔にしかならない。
 向こうでのその対象は、“話すこと”だった。言葉を交わさなくても、何も損なうことはない。ただ時間を浪費するだけの、無意義な行動でしかなかった。
 そして、その考えは事故後一層強固なものとなった。
 私と話しながら、憐みの色を瞳に浮かべているのだ。そんなことばかりで、正直うんざりしてしまう。……それでも、スグと幸歌とだけは、有意義な時間を過ごせていた気がしていたが。
 まあそれはともかくとして、この考えはこの現実世界に来て変わった。
 “話すこと” ――――すなわち“情報収集”。これはこの世界で生き抜くための重要な要素だ。この現実世界で生き抜くためには、情報が己の命綱となる。モンスターを倒すにも、売買するにも、移動するにも、何をするにも情報は必要不可欠なものであった。ただ、向こうで鍛え上げられてしまったコミュニケーション能力の低さがあったため、“あること”をして誤魔化してはいるが。そうまでして補わなければならないほどに、“会話”は重要な行動であると私は認識を改めた。
 一方で、重要性のレベルを下げた部分がある。その項目の一つに、“食べる”という行動が含まれていた。
 食事という行為は、この世界では必要のないものである。装備やポージョン類を揃えるために金を使った方が明らかに有意義だと言えよう。ちなみに、そう判断したのはこの世界が生まれた日と同日だ。今では空腹というものがなんだったのか、と疑問に思うほど全くそれらしいものを感じない。
 そのことに対して、さほど不安感は抱いていない。これで良いのだ。不必要なものは排除すべきなのだから。
 ――――そう、思っていたのだけれど。やはりこの思考回路は、常人のそれと大きく食い違ってしまうらしい。
「……会食?」
「あぁ、そうだ」
 会議が終わり各自解散ということになって、彼らと必要なことだけを話してこの場から離れよう、と思っていた矢先のこと。
 ボス戦は一日おいた明後日に実施することになったのだが――――、
「親睦を深めるためにな。キカと俺らって、会話らしい会話をほとんどしてないだろ?」
「……ええ、まあ、そうだけれど……」
「それに、明日、ボス戦前に一度は戦っておきたいから、その相談も兼ねて」
 エギルが、ニカリと歯を見せて笑う。後ろの方へ視線をやれば、パーティメンバーである男4人も一様に笑っていた。
 私は、波打つ感情を抑えるために、ふぅと小さく息をつく。
「……私も、あなたたちといきなりボス戦で闘うのは不安が残るので賛成です。けれど、会食の方は遠慮させていただくわ」
 迷いはなく、それをはっきりと口にする。エギルは断られるとは思っていなかったのか、一瞬間の抜けた顔をしたが、すぐにフレンドリーな笑顔に戻る。
「何か用事でもあるのか?」
「いえ、そういう
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