暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第3話 狂っているモノは何?
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はないかと本気で思ってしまう。
 なぜなら、今現在“彼”は、石段を後ろから数えた方が早い場所――――つまり、かなり後ろの方にいる。対して、私は最前列。しかも、≪エギル≫というプレイヤーをはじめた屈強な男たちに囲まれている構図だ。
 まず、この状態でバレることはないだろう。この先のことを考えたら、何か手を打たなければならないが。
「……それにしても」
 たった今、そのエギルが目の前の茶番に加わり、場を収め始めた。正直これ以上続けられたら、私が飛び出してしまいそうだったので、安堵の息をつく。
 私の嫌いなものベスト3は、下から順に、“しつこい”、“うるさい”、そして“無駄”。あの男は、めでたくこの上位2つに当てはまっていらっしゃる。
 こういう会議は静かに、なおかつ迅速に進めていくもの。ああいう必要のない“無駄”な発言は場を混乱させ、やる気を削ぎ、また内容によっては疑心や怒りを生む。
 今回も例に漏れず、現在この場の全員に不安が生まれているだろう。それは、上手く収束できれば良いことだが、悪ければこの場が瓦解する。
 ……すなわちそれは、この世界では“死”を意味するのだ。
 本当、“無駄”なことに、いいものなんて何ひとつ存在しない。
「……おつかれさま」
「おう」
 上手くあの男を丸め込んだエギルをちらりと認めて、ねぎらいの言葉をかけた。それに短く返事を返してきた彼は、どかりと私の横に腰を下ろす。
 その姿を確認した青い髪の青年――――ディアベルは、小さく頷き、髪をなびかせながら再び中央へ歩いて行った。そして、ようやく会議が再開される。
 どうやら、先ほど寸断されてしまったが、パーティを組むようだ。この場にいる全員が移動を――――と思ったが、たいして動くことは無かった。……まぁ、かくいう私も、例によって全く動いていないのだが。
 彼らとは、数時間前に主街区とフィールドを分けるゲートで出会った。今回のボス攻略に参加すると聞いたので、私もパーティを入れてもらえるよう事前に相談していたのだ。予想に反し快諾してくれたおかげで、私は何の心配も無くここにいる。もし余るなんて事態に陥っていたら、必然的に後方の“彼”と顔を合わすことになっていただろう。ハッキリ言ってゾッとする。
「キカ、お前、武器は曲刀だったよな」
 私が思わず二の腕を擦った時、他のパーティメンバーと話していたエギルがひょいとこちらを見て問うてきた。街中では私は武器を装備していないので、こうするしか確かめることが出来なかったのだろう。それでも覚えていたのだから称賛する。
 私は笑みを作り、首肯しながら、小さな声でこう付け足した。

「そうよ。……一応、ね」







 “無駄”。
 それは、私の嫌いなものの最上位に位置するもの。合理的に進めていきたい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ