ターン49 鉄砲水と天部の舞姫
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「………えっと」
「………」
「あ、はい、なんでもないです……」
時は……えっと、いつなんだろう今。ともかく3つの太陽がすべて地平線の向こうに沈んだから、ざっくり夜だということぐらいしかわからない。場所はある教室、登場人物は僕と十代、翔、剣山、明日香にジムとヨハン……ざっくり言えば、夢想を除いた旧SAL研究所突入メンバーだ。十代が不安そうに成り行きを見ている中、他の面々は多かれ少なかれ非難を含んだ目つきでこちらをじっと見ている。とりわけ、明日香からの視線が強い。どうにかアカデミア校舎にたどり着いた僕をいきなりこの教室に引っ張ってきたのも彼女で、それからもほぼ一言も喋っていない辺りに凄まじい怒りが見て取れる。
どんどん重くなってくる空気の重さに耐えかねたかのように、口火を切ったのは十代だった。
「な、なあ清明。俺はさっきお前とデュエルして、お前には何かお前なりに事情があったんだって信じてるぜ。だけど、1人で悩んでるなんて水臭いじゃないか。一体何があったのか、俺たちにも説明してくれよ」
ここまで来た以上もうごまかしたり逃げたりすることは逆効果にしかならないだろうし、何よりそんなことではここにいる皆も許してくれないだろう。それに、さっきも皆には後で説明するって言っちゃったし。
「どこから話せばいいのかな。えっと……」
全てのきっかけになったよくわからない予知夢のことから話し始める間、誰も口を挟むことはなかった。夢を見たのがきっかけだった、なんて我ながらメルヘンな話だとは思うけれど、僕らもこの2年間で世界にはいろいろ不思議なことがあることをいやというほど思い知らされたからだろうか。
「そうか、だからあのデュエルの時、少し様子が変だったのか」
「うん……。一言一句違わずに同じ盤面に持ってかれたからね、こっちも気が気じゃなかったよ」
そして、その後コブラとデュエルをしている最中にふと気が付いてしまった僕の心の闇……ここ最近、光の結社との戦いがひと段落してからの負け続きで少し、また少しと僕本人ですら気づかないうちにひっそりと広がっていった恐怖。
「でも結局、僕は怖かったんだ」
負けることそのものにではなく、その結果どんどん強くなっていく他の皆に置いて行かれるのではないかという不安。
「だってそうでしょ?皆はこの2年間で、入学した時とは比べ物にならないぐらい強くなった。だってのに僕はどうだっての?新しい力を手に入れたって、結局満足に使いこなすこともできない。一瞬スランプも抜けられた気もしてたんだけど、でもやっぱり現実を見せつけられてさ」
我ながら、うじうじうじうじと女々しいなあとは思う。だけどそれは一度口に出し始めると、もう止まらなかった。喉の奥につかえていたような恐怖を吐き出すごとにそ
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