『彼』
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かにできな、…って、キャァアアアアアーーーーーーッ!犀ッ!」
下を見た日紅は絶叫した。
「日紅!?」
日紅の部屋のドアが激しくダンダンダンと叩かれる。
日紅はさっと青くなった。
「どうしたの、日紅!何かあったの!?」
「な、なんでもないのお姉ちゃん!」
日紅はやっと部屋まで運ばれてきた犀を見た。
『彼』は運んできたものの、犀を部屋に入れようとはしない。
その間にも、ビッ、ビリリとーーー…。
ああ願わくば買ったばかりと犀が自慢していたコートの強度が防弾チョッキも真っ青のものであるか、のっぽさまの枝がクッションのように落下した犀の体を受け止めてー…って我ながらありえないー!日紅の思考は一瞬現実を逃避した。
「あ、あああたしぃっ!あって欲しくない現実、じゃない夢、夢を今見てっ!大声上げちゃったのぉ!なんでもないから、大丈夫!」
「…そうなの?本当に大丈夫?そっち、行こうか?」
「いやいやいやいやいや!本当大丈夫だから!お姉ちゃんはもう寝て、すぐ寝て、早く寝て!」
日紅は訝しむ姉の部屋のドアが閉まる音を聞くと、はっと我に返りすぐさま犀に手を差し伸べた。けれど、その手が犀に触れる一瞬前に『彼』はいきなり、犀の襟首を掴んでいた手をぱっと離した。
「おわーーーッ!?」
「犀!」
犀は咄嗟にぐわしっと『彼』の足に掴まる。
「巫哉!」
「何すんだよ月夜!殺す気か!?」
「死ね」
「ちょっと巫哉冗談でもそういうこと言わないの!ほら犀、掴まって」
かくして、やっと収拾のついた部屋の中で、日紅はぱたんと窓を閉めると息をついた。
日に日に、『彼』の犀に対する扱いが酷くなってきているのは気のせいではないだろう。
「…ごめんね、犀。その服、弁償するわ」
真っ赤になった首もとと襟元の破れが激しかった戦いの痕を物語る。
「何で日紅が月夜のやったことを弁償する必要があるんだよ。こいつにさせればいい」
「何言ってるのよ犀。巫哉に弁償できるわけないでしょう?お金持ってないんだし」
「別に金じゃなくてもいい」
犀がちらりと横目で『彼』を見ると、『彼』はしたり顔で言った。
「じゃあ体か」
「は!?」
日紅は目を剥いたが、犀はにやりと笑った。
「そうだな。じゃァ体で返してもらおうか」
「な
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