第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
我愛羅
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して血を見たい。自分の存在を確かめたい。
だってそう、人を殺すのが自分の存在を一番確かめられる時なんだから。
「さあ――ここまでだ」
すとり、と降り立ったサスケの姿。一瞬、我愛羅の中を正気と狂気が駆け巡った。唇から漏れ出ている声が自分の物なのか他者の物なのかわからないくらいに。ただ、声が呪いのようにこぼれ続けた。
「強いお前。うちはと呼ばれるお前。仲間のいるお前。目的のあるお前。俺に似ている――」
孤独の臭いのする少年。
「――お前!」
それがうちはサスケ。
そして同時に、我愛羅。
「お前を殺すことで、その全てを消し去ることで俺はこの世に存在する……!」
強いうちはサスケも。うちはと呼ばれるサスケも。ナルトやサクラやカカシとの繋がりを持つサスケも、兄のイタチを憎み、復讐を願うサスケも。我愛羅に似て酷く孤独な臭いのするうちはの少年も。
全部全部全部。我愛羅に殺されることによってこの世に存在しなくなる。
そして。
「――俺は生を実感できる……!」
ピリリと砂の鎧に亀裂が走った。
何のために生きているのだろう? 自分が消えて悲しむ人はいるだろうか? 自分が居て嬉しく思う人はいるだろうか? 何のために人を殺すのだろう? 何のために生きているのだろう? 何のために生きているのだろう? 何のために生きているのだろう? 何のために存在しているのだろう? 何のために生きているのだろう? いやそもそも自分は生きているのか?
自分に向かって問いかけた無数の問いかけを、無数の疑問符を、片付ける簡潔な答えが必要だった。結果的に我愛羅は別段何かを沢山考える必要はなかったのだろう。酷く簡潔な答えが転がり落ちた。
誰かが死ぬのは自分のためだ。誰かを殺すのは自分のためだ。誰かが死ぬのは自分が生きていることを実感させてくれるためだ。誰かを殺すのは自分が生きていることを実感するためだ。誰かの死は全て自分の生のためにある!
そう思えたのなら。そんな一つの感嘆符で無数の疑問符を打ち消すことが出来るのなら。
それほど心地よいこともないだろう。
「……っ!」
ヒルゼンが大蛇丸という形持つ狂気と対面している一方で。
サスケもまた、我愛羅という形持つ狂気と対面していた。
己の器を測るために人を殺すといった兄イタチのあの狂気は酷く静かな一方で、それでいて我愛羅のものとそっくり似ていたように、真実を知らないサスケは一人思う。器を測るために一族を殺すイタチと生を実感するために人を殺す我愛羅。一人の狂気はひどく静かで、もう一方の狂気はひどく激しかったけれども、それはある意味で似通っていた。
ふと脳裏に何かが思い浮かぶ。なんだろう。泣いている。泣いているダレカ? 月? 死体? 血?
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