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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 17
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罪悪感で胸が締めつけられ、涙が溢れそうになる。

「謝らなくて良いのよ。これは保護者である私の義務と責任だもの。でも、不安があるなら相談してね。お願いだから、一人で抱えて苦しまないで」

 ハウィスの両腕がミートリッテの肩を抱き。
 子供をなだめる仕草で、ぽんぽんと背中を軽く叩いた。

「ハウィス……っ」

 ミートリッテは、声を上げて泣き出したくなるのを懸命に堪え。
 柔らかな胸元に顔を押し付けながら、物差しを握ったまま、ぎゅううっとしがみつく。

(護らなきゃ。この人だけは絶対、何がなんでも護らなきゃダメだ!)

 もう、依頼がどうとか、指輪が無いとか。
 手段なんかに(こだわ)って、惑わされてる場合じゃない。
 海賊からハウィス達を護る。
 それだけの為に、できることをしよう。
 条件は

『海賊にシャムロックの正体を口外させない』
『ハウィスと村の人達の安全を確保する』

 この二つだけ。
 この二つだけを死守できれば良いんだと。
 ミートリッテは目蓋を閉じて、ハウィスから離れた。

「……うん。ありがとう、ハウィスお母様。デレッデレに甘えちゃうから、覚悟してね? ハウィスお母様」
「く……っ! わざと二回も言ったわね? 精神攻撃のつもりなのかしら、この娘は!」
「あはは! そんなに気にするなら、いっそ本当に娘を授かったらどう?」
「嫌よ! 私には、手の掛かる可愛い娘が一人居れば十分です!」

 両腕を組んで鼻息荒く宣言するハウィス。

 七年前の、初めて会った時の願いを……
 少し形は違っていても、子供に戻りたいと叫んだミートリッテの願いを、彼女は惜しみない愛情で叶えてくれた。
 共に過ごした歳月で積み重ねてきた言葉一つ行動一つに、ミートリッテがどれだけ救われていたか。
 彼女はきっと、知らない。

「ありがとう。じゃ、貴女の愛娘は部屋の様子が気になるので、急ぎ二階へ見に行きたいのですが。よろしいかしら?」

 物差しをバッグにしまって玄関まで戻り、扉を閉めて振り返る。

「構わなくてよ? ただし、不備があっても苦情は受け付けません」
「朝食の失敗みたいな?」
「朝食の失敗に対するお説教みたいな」
「……では、大海の心を持って挑むとしましょう」

 階段の手すりに右手を預けてハウィスと睨み合い。
 互いにクスクス笑って、離れた。



 灯りを差した室内には、今朝と比べても大きな変化はない。
 カーテンやシーツなどの布類が洗われ。
 部屋の隅々まで綺麗になっているだけだ。
 元々家具が少ない上、見られて困る物は全部自分で持ち歩いていたから、当然と言えば当然だった。
 しかし、一つだけ重要な物が欠けている。

「……洗ったのかな?
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