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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十二話 フリードリヒ四世
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た。

「はい、反乱軍に大兵力にて出兵させこれを撃滅します。認めていただけぬので有れば、小官は宇宙艦隊司令長官へは就任出来ません。帝国の防衛に自信がもてないのです」

「……」
謁見の間を沈黙が支配した。何時内乱が起きるかわからないなかで帝国領に大兵力の反乱軍を誘引する。一つ間違えば帝国は滅びかねない。簡単には決断できないだろう。

「ヴァレンシュタイン、もしその案を認めた場合、ローエングラム伯の処分をどうするつもりだ」
フリードリヒ四世が問いかけてきた。

「伯を一階級降格して大将にします、その上で宇宙艦隊副司令長官を」
「それでは甘すぎる、軍の統制が取れなくなる」
「必要以上に厳しくしろとは言わぬがシュタインホフ元帥の言うとおり甘すぎるのではないか?」

エーレンベルク、シュタインホフの両元帥が処分が甘いと言って来る。シュタインホフ元帥も反発から言っているのではないだろう。

「反乱軍もそう思うでしょう。帝国の宇宙艦隊司令長官は病弱で前線に出られぬ、副司令長官は大敗を喫しながらも皇帝の寵姫の弟であることを利用して軍内に地位を得ている。おまけに二人とも未だ二十歳を過ぎたばかりの小僧、今の帝国軍にはミュッケンベルガー元帥の頃の武威は無い。今こそ攻めるべきだと」

「それに、小官は万一のためにオーディンに留まる必要があります。実際に宇宙艦隊を指揮統率するのはローエングラム伯にお願いする事になるでしょう」

「……」
しばらく沈黙が流れた。皆視線を落とし考え込んでいる。
「卿の考えは判る。しかしそれだけで反乱軍が攻め込むか?」
シュタインホフ元帥が呟くように問いかけてきた。彼の疑問は尤もだ。他にも手は打たねばならないが、此処は引けない。

「攻め込ませます」
「!」
俺の答えに皆何かを感じたのだろう。リヒテンラーデ侯、エーレンベルク、シュタインホフの両元帥は顔を合わせると互いに頷いた。

「陛下、臣等はヴァレンシュタイン大将の考えを支持します」
リヒテンラーデ侯がフリードリヒ四世に話しかけた。これでラインハルトの処分は決まった。後は皇帝の判断しだいだ。皇帝は一つ頷くと俺に問いかけてきた。

「ヴァレンシュタイン、反乱軍を何時までに撃滅するつもりか」
「……年内には撃滅いたします」
「そうか、そちは予の寿命を年内一杯と見積もったか」

「!」
フリードリヒ四世の言葉に室内の空気が一気に緊張した。
「陛下、何を仰られますか」

リヒテンラーデ侯が皇帝をたしなめるが、皇帝はむしろ楽しそうに話を続けた。
「国務尚書、そちとて同じような事は考えたであろう、ちがうか?」
「……」

「面白いの、この帝国の危機に予の寿命まで冷静に図って策を立てるとは。面白い男が居るものじゃ」
「……」

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