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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 変身
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だとしたら余りにも皮肉すぎる……。

「卿にも詫びねばならないことがある。ベーネミュンデ侯爵夫人の件だ」
ラインハルトは神妙な表情で話しかけてくる。
「……」

「あの件で卿は私に動くなと言ったな。だが、私はロイエンタールに命じて噂を流した。卿が闇の左手だと」
「……」

「卿が襲われたと聞いて自分が如何に愚かな事をしたのか知った。誓って言うが、決して卿の死を願ったわけではない。ただ卿に反発する気持ちが有ったのだと思う」

多分そうなのだろう。それとアンネローゼに対する執着があった……。その事があの事件を引き起こした……。

「済まなかった。愚かな事をしたと反省している」
「知っていました。その事で閣下を失脚させようと考えました」
「そうか……。何故失脚させなかった?」

「ミュッケンベルガー元帥の病気を知ったせいです。それが無ければ躊躇無く閣下を失脚させていたでしょう」
「そうか。卿はやはり怖い男だな」
そう言うとラインハルトは微かに苦笑した。

その後、俺とラインハルトは軍とは全く関係ない話をした。主に幼少時の思い出話だった。俺が女の子に間違われた事を話すとラインハルトは声を上げて笑った。何の邪気も無い笑顔だった。少しも不愉快ではなかった……。


■ 帝国暦487年5月15日    オーディン 新無憂宮  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


軍法会議は五月十一日から十四日の四日間で行なわれた。争点は二つ、一つはイゼルローン要塞失陥についての責任の所在。二つ目は、損傷率が九割に及んだ艦隊戦についてラインハルト、及び宇宙艦隊司令部の責任の有無。

イゼルローン要塞失陥については帝国軍三長官の責任は無しと判断された。これは比較的簡単に結論が出た。事前に出されたイゼルローン要塞、イゼルローン駐留艦隊行動命令がその根拠だった。

行動命令では要塞攻防戦が発生する危険性を指摘しイゼルローン回廊の制宙権を放棄しても要塞を守れと指示を出している。帝国軍三長官の責任は問えなかった。

揉めたのは艦隊戦だった。艦隊戦については問題点が提起された。一つはラインハルトを一個艦隊で出征させた事だった。これに関しては出征が決定された時点、出征の時点で明確に同盟の反撃の動きが見えなかったことで不問とされた。

更に言えば勅命を得ている。一つ間違うと皇帝の権威を傷つけることになりかねない。皆及び腰だった。

次に問題となったのは艦隊の編制だった。分艦隊司令官が少なく、その事が艦隊運動に精彩を欠き惨敗の一因になったという指摘だった。この点はラインハルトに責任ありとされた。

宇宙艦隊司令部、正確に言えば俺に対して責任を問う声が上がったのだが(主としてシュターデンだった)、編制自体はラインハルトが自ら行なうと決
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