第三章
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「けれどね」
「飽きたかな」
「飽きたというかたまには他の場所行きたいわ」
スノッリに確かな顔で話した。
「ここはね」
「そうなんだ、じゃあ」
ビクトリアにそう言われてだ、スノッリは考える顔になった。そしてシチューの中の人参や玉葱を見てから言った。
「植物園とか?」
「植物園に行くの」
「シチューの中の人参や玉葱を見ていたら」
それでというのだ。
「これかなって思ってね」
「同じ植物だから」
「そう、植物園はどうかなってね」
「植物園ね」
「あそこは暖かいよ」
冬のアイスランドの中にあるがというのだ。
「温室だからね」
「そうね、植物園はね」
スノッリに言われてだ、ビクトリアも頷いた。
「全部温室の中でね」
「暖かいよね」
「ええ、ビニールハウスと同じで」
「だからなんだ」
「今回のデートは植物園ね」
「そこでどうかな、喫茶店もあるし」
「ええ、じゃあね」
ビクトリアは微笑んでだ、スノッリの言葉に頷いた。そのうえで彼に答えた。
「お願いするわ」
「うん、じゃあね」
「一緒に植物園に行って」
「色々な植物観ようね」
スノッリもにこりとして応えた。こうしてだった。
日曜日にだ、二人はバス停で待ち合わせをしてだった。そのうえで植物園に向かうことにした。スノッリは凍った街の中に立っていると。
ビクトリアが来た、彼女の今の格好はというと。
厚いくるぶしまでの赤いコートに黒の革のブーツ、白いマフラーとミトンにだ。頭にはロシア軍が被る様な耳まで完全に覆っている黒の帽子がある。
その完全武装で来てだ、スノッリに言った。
「待った?」
「今来たところだけれど」
ありきたりの言葉だがその通りだった。
「それにしても」
「どうしたの?」
「今の君の格好凄いね」
「だから寒いから」
それでとだ、ビクトリアは言葉を返した。顔も下半分が完全にマフラーに覆われていて目と鼻だけが見えている。
「下は青のズボンでストッキングも靴下もよ」
「完全装備なんだ」
「今日もね」
「やっぱり寒いから」
「ネス湖の傍よりも寒いわ」
ネッシーが出るというスコットランドで最も有名な湖だ。
「あとマン島よりも」
「人魚が出るっていう?」
「人魚は見ていないけれど寒かったわ」
そのマン島もというのだ。
「けれどアイスランドはね」
「寒くて」
「この通りなのよ」
完全装備だというのだ。
「だからね」
「いつも通りに」
「そう、完全武装なのよ」
まさにというのだ。
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