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兎を追い掛けて 
第四章

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「そして人生は幾ら走ってもね」
「疲れないもの?」
「目標があればね」
 そうならばというのだ。
「そう言ってたでしょ、お父さんが」
「そういえばそんなこと言ってたわね」
「そうでしょ、そして私達の今の目標はね」
「兎さんね」
「そうなるわ」
 まさにというのだ。
「今目の前を走ってるね」
「そういうことね」
「だから私達も今はね」
「疲れないのね」
「幾ら走ってもね、ただね」
「ただ?」
「ここであの兎さんが何時何処に着くかは思わないことよ」
 そうしたことはというのだ。
「そう思ったらね」
「何時終わるかって思って」
「疲れを感じるのよ」
「じゃあ今は」
「何も考えないことね」
 こう妹に言うのだった。
「ただ兎さんを見てね」
「そうしてなのね」
「進めばいいのよ」
「何も考えないで」
「ひたすらね、そうしていけばね」
「疲れないし」
「絶対に辿り着ける場所に着けるわ」
 姉は走りながら微笑んで共に走る妹に言った。
「物事には何でも終わりがあるから」
「ずっと走るものじゃないのね」
「そう、だからこのまま何も考えずに走るわよ」
「兎さんを追って」
「そうするわよ、それとね」
「それと?」
「今私達は二人だから」
 自分達のこともだ、メアリーは話した。
「余計にいいのよ」
「それはどういうこと?」
「一人でいるよりもね」
「二人でいた方がなの」
「お話も出来て苦労も分かち合えて」
「いいのね」
「一人だとそうはいかないわ」
 とてもという口調での言葉だった。
「寂しくて辛くなるわ」
「それで我慢出来なくなるのね」
「そうなるわ、考え過ぎることもあるし」
「けれど二人だと」
「相談も出来て辛くもなくなるわ」
「そうなるのね」
「だからね」
 それで、というのだ。
「私達は二人でいることもいいよ」
「そういうことね」
「だからいいわね」
「ええ、二人でね」
 キャロルも言った。
「行きましょう」
「兎さんの行く先までね」
 二人で話してだった、そうして駆けていくと。
 兎はある場所に来た、そこは薔薇が咲き誇っている庭で。
 そこに円卓がありだ、座っているのは。
 トランプの王と女王、ハンプティダンプティに。
 アリスもいてだ、そして。
「あれっ、あの人は」
「そうよね」
 メアリーとキャロルは円卓に座っている最後の一人も見た、昔風のスーツで首にはアイボリーネックのスカーフを付けている。
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