第二章
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「お父さんもお母さんも言ってないわよ」
「そうよね」
「じゃああれは」
「まさかと思うけれど」
「アリスの兎よね」
「そのままよね」
「ええ、挿絵に出ている通りよね」
話の冒頭のそれだ。
「その兎ね」
「どう見てもね」
「そうよね、どうしようかしら」
「若しもよ」
メアリーはその兎を見ながらキャロルに話した。
「あの兎を追い掛けたら」
「私達もなのね」
「不思議の世界に行けるかも」
「そうなるのね」
「そう、どうかしら」
こう言うのだった。
「行く?二人で」
「アリスになるの」
「そうしてみる?」
「最後大変なことにならない?」
キャロルはアリスのあらすじから姉に言った。
「死に掛けるとか」
「助かってるでしょ、アリス」
「じゃあ大丈夫?」
「そう、何だかんだでそうした世界じゃない」
不思議の国のアリスも鏡の国のアリスもだ。
「むしろ多少の危険の方が面白いわよ」
「死なないのなら」
「そう、じゃあここはね」
「あの何故か出て来た兎についていって」
「行ってみましょう、私達も」
「不思議の国に」
「そうしましょう」
メアリーは楽観的な笑みを浮かべてだった、妹に告げてだった。
その彼女を連れてだった、二人で庭に出て家の壁を跳び越えようとしていた兎に対して明るく声をかけた。
「ねえ兎さん」
「ちょっといい?」
「おや、何だい?」
兎は動きを止めて二人の方に振り向いて応えた。
「見ての通り私は急いでいるのだがね」
「これから何処に行くの?」
メアリーが微笑んでだ、兎に尋ねた。
「貴方のお国に帰るの?」
「そう、帰ってね」
「帰ってどうするの?」
「お茶を飲むんだよ、皆でね」
「皆っていうとトランプの王様とか」
「アリスにハンプティ=ダンプティにね」
それにと言う兎だった。
「キャロル先生もいるよ」
「あら、そのキャロル先生も」
「そのお茶会に今から行くんだよ」
「そうするのね」
「そうだよ、じゃあ急いでいるからね」
兎は前の方を向きなおって言った。
「私はこれでね」
「待って、私達も行っていい?」
メアリーは兎に申し出た。
「貴方と一緒に」
「そうしたいのならどうぞ」
これが兎の返事だった。
「私は止めないよ」
「何かあっさりとした返事ね」
「私は急いでいるし君達とは縁がないからね」
だからだというのだ。
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