第二章
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「見えません」
「そうか」
「ですが」
「ああ、我々がここに潜んでいると察してな」
「輸送船が来なくなったということは」
「我々を襲って来る」
潜んでいる彼等を狙ってだ。
「そうしてくるものだ」
「そうですね、では」
「輸送船にも護衛がついている」
その駆逐艦や護衛空母達だ、所謂護送船団方式であり一次大戦の頃からある連合軍の潜水艦対策である。
「そしてだ」
「我々を沈める為にも」
「敵が来る」
それで、というのだ。
「だから影でも見付けたらな」
「それで、ですね」
「潜るぞ」
「すぐに」
「そうする」
艦長としてだ、彼はその時の決断を言うのだった。彼等はまだ少し待っていたがだ、ゴルトマンは自分が潜望鏡から海を見ている時にだ。
空に影を見てだ、すぐにこう命令した。
「潜るぞ」
「出ましたか」
「ああ、敵機だ」
それがというのだ。
「だからだ、潜ってだ」
「やり過ごしますか」
「そうしよう」
「了解です」
ヴァルターも応えてだ、そうしてだった。
彼等はだ、潜ってだった。
やり過ごすことにした、しかし。
ここでだ、ゴルトマンは部下達に言った。
「音は立てるな」
「はい、敵は最近ですね」
「ソナーも持っていますから」
「そこで音を立てたら」
「そこから見付けてきますね」
「敵は耳もあるんだ」
空からの目だけでなく、というのだ。
「その全部を使って我々を見付けようと躍起だ」
「そして見付けてきて」
「そうしてですね」
「沈めて来る」
「そうしてくるから」
「そうだ、音もだ」
潜るだけでなく、というのだ。
「立てるな、いいな」
「わかりました」
「じゃあそこも気をつけて」
「静かにします」
「我々は見付からないうちは強い」
潜水艦はというのだ、隠密に敵に近付き魚雷で攻撃する。しかしその彼等が見付かってしまった場合はというのだ。
「だが見付かればだ」
「その時点で終わりですね」
「まさに」
「そうなりますね」
「だから潜ってだ」
そうしてというのだ。
「ここはやり過ごすぞ、いいな」
「了解です」
「そうしましょう」
「最大深度まで潜行する」
さらにだ、彼は言った。
「そしてだ」
「そこからですね」
「動かない」
こう言うのだった、ヴァルターに。
「一歩もな」
「音も立てず」
「夜になればだ」
その時にというのだ。
「港に戻るぞ」
「そうしますか」
「夜になれば」
ゴルトマンは真剣そのものの顔で言った。
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